開院時間
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住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
当院に今年から何度か通ってイベントに参加している社会人の方。来年から鍼灸マッサージ専門学校に入学します。学生ならぬプレ学生さんです。進学先の相談を重ねて、志望校を決定、受験し合格。この段階まで来ました。来年春には専門学校生活が始まります。その方々の希望もあり専門学校での授業対策をお話することになりました。私の持論というかたくさん学生さんを見てきた経験から、鍼灸師は入学前に卒業後の未来が8割くらい決まる、と考えています。以前は5割、そのうち6割、と比重が増えてきて今はほとんど入学前に将来が左右されるなと感じています。というのも結構、学校見学もしないまま入学している人がいます。それどころかこの仕事がどのようなものかをきちんと理解していない状態で。業界研究がされていない。鍼灸師は卒業後にかなり高い割合が鍼灸師としての仕事を辞めていくといいます。確かにそうでしょう。最低3年間も勉強し、多くが数百万円の学費を支払っているのに。また入学後の退学者もかなりいると聞きます。まだ退学した方が払うはずの学費、通っていた時間を節約できます。国家試験をパスして免許を取りながらそれを活かすことなく去っていく。非常にもったいないこと。それは進学前の行動が関係するように考えます。少なくない学生さんから学校選びに失敗したという話を耳にします。一方、よく業界研究をしていた学生さんからはそのような声はあまり聞かれません。事前に調査をしているので、思っていたこととは違う、と幻滅することが少ないのだと思われます。
当院に来ているプレ学生さんも研究に余念がなく足で情報を稼ぎ、意見を求めて考えた上での進学です。その分、入学後の授業についていけるか心配という不安もあるようです。これくらいしっかりしていれば大丈夫だと安直に思いがちですが、私が学生の頃とはカリキュラムが違います。学ぶ内容は難しく広くなっています。安易に君たちなら平気、などと言うのは不誠実。また勉強の仕方というか方向性を間違えると卒業後に失敗するという懸念もあります。そこで将来の専門学校における授業(座学、実技、試験対策を含めたもの)の対策をしようということになりました。私はこのような内容で過去に何度か学生向けセミナーをしているので。また事前に参加者からどのようなことが不安なのかをヒアリングしてそれに回答する形になるように内容を調整しました。
まず講座の方はこれまで行ってきたセミナー内容をなぞる形で行いました。
鍼灸マッサージ専門学校とはどのような存在なのか。実は最も重要なことは国家試験の受験認定を出すことにあります。どれだけ頭が良くて技術があったとしても国家試験に合格しなければこの仕事に就くことはできません。業務独占の国家資格であるから。その国家試験を受験するには認定がされていないといけません。その認定をするのが専門学校だというわけです。その過程で座学、実技を教えるのです。
専門学校は食うためのことを教えない(例えば技術と経営について)。そのような声を学生からも開業鍼灸師からも聞かれることがあります。それは本当にそうなのか。的外れな意見ではないのか。そのような話題に触れます。食える技術とはいったいどういうことなのか。経営に関することは学習指導要領にはなく教える義務は学校にないです。往々にして国家試験に出ないことは時間の無駄だから授業で話すな、という意見を述べる学生もいるといいます。経営の項目は国家試験にはないのです。私の母校である東京呉竹医療専門学校は2年時に開業支援の授業を行っています。税の事や開業について教えています。教える学校もあるわけです。
国家試験対策の勉強と臨床に活用するための勉強は異なるということ。現行の国家試験は座学のみで4択問題です。マークシートで4つのどれかを選べば回答自体はできます。4択問題対策をしっかりやれば国家試験自体は合格できます。ただそれが卒業後の臨床に結びつくのかは別です。試験とは理解しているかどうかを確認すること。臨床に役立つ勉強と国家試験対策(すなわち4択問題を解く勉強)は似て非なるもの。きちんと勉強した先の最後の習熟度を効率よく確認するものが国家試験であることを知ってもらう。専門学校入学後の勉強をする手順を説明しました。
具体的にどのように勉強したらよいのか。実体験や過去の学生さんからの話を踏まえて勉強方法例をいくつか紹介しました。また4択問題を解くテクニック。試験は出題者とのコミュニケーションだということで、教員側が定期試験の問題を作成する心理を紹介。問題の難度をあげるやり方。努力をみるための出題例などを紹介しました。
ここら辺が既存の内容でした。そこにいくつか新項目を入れました。
国家試験で出題される科目をあげてそれを分類します。西洋医学系(現代医学系)か東洋医学系(伝統医学系)かそれ以外か。それぞれが基礎、応用、臨床、その他に分類。更に学校協会が扱う教科書の種類を紹介。私が学生の頃と違って今は解剖学と生理学が合わさった解剖生理の教科書になっています。教科書と教科が一致していなものがあることや教科書はあるけれど国家試験に出題されない科目があることを話しました。
次に理科の知識。これは「あはき師のための理科」という我々の仕事に関わる理科の知識を説明した内容から物理と化学の一部を抜粋して説明しました。エントロピーの法則、ポテンシャルエネルギー、元素・原子・電子、イオン、電位と電圧、オームの法則といったところ。理科系でないと特に理解に苦しむであろう、神経の静止膜電位・活動電位のところを学ぶための予備知識をお伝えしました。
そして実技の授業についていけるか不安だという意見を事前にもらっていたので、手を作るということ、器材に手を馴染ませること(鍼灸に関して)、アクセルよりもブレーキやナビゲーターの役割を入学前に意識してみましょう、といったことを話しました。具体的には手の触れ方、鍼の片手挿管、艾の捻り方などを紹介して少しやってもらいました。
講義を一通りしたあとは質疑応答や雑談。東洋医学の本を図書館で借りたけれど内容が入っていかない。各学年でどれくらいのところまでできていればいいのか。最近の学生状況は。私が学生時代に苦しんだこと。などなど。これまでは、いわば完成した免許を取得し開業して何年も経過している先生という目で私を見ていたと思うのですが、講座で私の専門学生時代の事、更には大学、高校、中学と専門学校入学前のエピソードまで紹介し、どのように勉強をしてきたのかを伝えたことで、成長過程が実感できたようです。当たり前のことですが、私も専門学校入学当初があり、実技練習に苦しみ、試験で赤点を取って再試験をした先に今があります。勉強で苦労したし点数が取れなくて悔しかった経験があります。そのことを知ることで来年からの学生生活のイメージがより具体的になってくれたようです。結局6時間ほど会は続きました。入学前に詰め込み過ぎという気もしますが、参加者のやる気があれもこれも話しておこうということになりました。私の学生時代にはなかった入学前授業、プレスクールを行う学校が多いようです。参加者もプレスクールが今後月1回のペースで行われると話していました。覚えることは増え、試験内容は難しくなっていきます。より早い段階から対策をしていかないといけなくなっているのです。
入学前から好奇心と危機感をもって貪欲に入学準備をしているプレ学生さん。その気持ちに応えようと思いました。
甲野 功
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