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~京都の按摩師さんとの会談~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 京都の按摩師さんとカフェで会談
京都の按摩師さんとカフェで会談

 

 

先月の10月27日に単身京都に日帰り旅行に行きました。年に一度は京都観光をしているくらい京都が好きです。神社仏閣巡りが目的です。ただ今回は別の目的があり、それが京都のあん摩マッサージ指圧師さんとお会いして話をすることです

 

前々から考えていたのですが、鍼灸師に比べてあん摩マッサージ指圧師は技術交流や情報交換がなされていないのです

私はあん摩マッサージ指圧師の免許が欲しくて東京呉竹医療専門学校(現東京呉竹医療専門学校)に進学しました。あん摩マッサージ指圧師になるなら日本指圧専門学校長生学園という別の選択肢もあったのですが、相談した方から「同じ3年間で鍼灸師も取れるのだから本科(鍼灸マッサージ科)にした方がいいよ」と助言をいただき学校選択する際に本科を選びました。本科のある学校の中から東京呉竹医療専門学校を選びました。いうなればあん摩マッサージ指圧師を取る際についでに鍼灸師にもなったというわけです。このような経緯で入学したので鍼灸の方は実技練習をあまりせず学内試験に受かる程度でした。しかし東京呉竹医療専門学校は鍼灸から始まった学校ですので鍼灸の方に熱があります。本科(鍼灸マッサージ科)以外に専科(鍼灸科)、Ⅱ部専科(午後の部)、夜間専科(夕方以降)と当時は鍼灸師になる科がありました。なお本科はⅠ部(午前部)とⅡ部(午後部)。あん摩マッサージ指圧師も取るという学生の方が圧倒的に少数派でした(※当時の状況)。

 

入学から3年後、国家試験に合格しあん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の3資格を取得します。新卒で就職して職場で鍼灸をするようになると、臨床での鍼灸技術の無さを痛感します。現場で上達し研究していきました。就職から1年後に柔道整復師になるために進学を果たし、柔道整復学生と臨床の同時並行が始まります。午前中に柔道整復師のための勉強、午後から職場。再度勉強することで知識が定着、理解が深まり、鍼灸技術が向上することになります。一方、東洋医学を本腰を入れて勉強してこなかったことが気になるようになってきました。国家試験合格くらいの知識はありましたが実践的な理解には遠い。現代医学的な鍼灸はできても伝統医学的な鍼灸は心もとない。その懸念を抱えながら柔道整復師資格を取り整形外科クリニックに転職。そこから1年働いて更に鍼灸、東洋医学を学ぶために東京呉竹医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科(以下、教員養成科)の進学を決意します。

教員養成科で現代・経絡・中医という大きく3分野に鍼灸は分かれることを知ります。各分野の高名な先生が講師として授業をしてくれて座学、実技ともに深い知識・技術を得ました。この経験は非常に大きくて、本科時代に鍼灸や東洋医学を教える先生によって言っていることが違う、何だったら真逆のことを言う、という疑問が解消されたのでした。また教員養成科には北は北海道、南は鹿児島まで全国から学生が集まります。東京呉竹医療専門学校以外の学校を知らない私には他校の情報が新鮮で、常識が違うとも驚きました。ここで鍼灸の各技術や考えを比較検討する比較鍼灸学なることが必要だと感じました。流派ごと、学校ごと、地域差でも違いがあるようです。教員養成科でたくさんのジャンル・技術の鍼灸を学び凄く勉強になる一方、果てしない広がりがあることに途方に暮れました。今この瞬間も新しいやり方が生まれています。それは器材(例えばパルスジェネレーターなど)の進化も関係します。

 

そんなこんなで教員養成科を卒業してから10年、開業しながらコツコツと鍼灸の勉強・練習をしてきました。気になる鍼灸師に会いに行き講習を受けることもしました。ある程度やってきた先に、元々あん摩マッサージ指圧師になりたくてこの業界に足を踏み入れたことも思い返すようになります。教員養成科では全国から学生が集まりますがもちろん全ての学校の卒業生がクラスにいたわけではありません。特にあん摩マッサージ指圧もある専門学校は全国で20校ほど(視覚支援学校、大学を除く)。その中で教員養成科を持つ学校の学生は東京呉竹医療専門学校の教員養成科に入学することは稀。更に在学中は鍼灸のことに頭が一杯で手技(あん摩マッサージ指圧)の方まで回りませんでした。今になり、あのときもっと各校の情報を得ておけば良かったと悔やむのです

 

今年に入り神奈川衛生学園卒の先生から後藤流按腹を受けました東京衛生学園と神奈川衛生学園は姉妹校であり東京衛生学園は教員養成科がありました。そのため衛生学園卒の先生と知り合う機会がこれまで無かったのです。後藤流按腹というものがあることは噂として知っていたのですが実情を知らず。また母校が行っている呉竹医学会学術大会一枝のゆめ財団理事のマッサージ療法を見学しました。術者は視覚障害があり、それまで知っていたマッサージとは異なる概念というか技術のものでした。まだまだ知らないことがある。教えるあん摩マッサージ指圧専門学校ごとに特色があるのだと再確認しました。

 

そして今回。京都で京都仏眼鍼灸理療専門学校卒のあん摩マッサージ指圧師さんと会うことができました。京都仏眼鍼灸理療専門学校は大正9年に失明者の救済を目的とした仏眼協会から始まった学校です。理療という言葉は視覚支援学校、すなわち視覚障害者向けに用いられることが多いのです。按摩が最初の学校だそう。現在は視覚障害者を侮蔑する呼称としてあんま・アンマがあるとされています。これはかつて視覚障害者の多くは按摩(あんま)師として生計を立てていたので按摩(あんま)=視覚障害者の仕事ということでした。現在でも放送禁止用語になっていると言われています。この京都仏眼ですが日本で唯一の、鍼灸科があるにも関わらずあん摩マッサージ指圧師科がある専門学校なのです。他の学校は私が出たように鍼灸マッサージ科か鍼灸科。あん摩マッサージ指圧師のみの科は存在しません。他の専門学校も同様です。鍼灸とセットです。あん摩マッサージ指圧科があるのは日本指圧専門学校と長生学園のみ。この2校は鍼灸科そのものがないあん摩マッサージ指圧師のみの専門学校です。鍼灸科もありながらあん摩マッサージ指圧科があるのは京都仏眼鍼灸理療専門学校だけなのです(視覚支援学校を除く)。その京都仏眼であん摩マッサージ指圧科を卒業したのが今回の京都訪問で会った先生です。

 

京都仏眼の存在は以前から知っていたのですが卒業生を一切知りませんでした。そこのあん摩マッサージ指圧科を出て京都で開業している先生をSNS(X)で見つけました。按摩師として確固たる信念があると投稿から感じ取りました。鍼灸も取れる学校で敢えてあん摩マッサージ指圧師のみ。鍼灸も一緒にとった私とは違います。純粋なあん摩マッサージ指圧師であることに興味があり、何より京都仏眼とはどのような技術を持っているのか。気になりアポイントを取ったのでした。

京都駅直結の伊勢丹10階のカフェで2時間あまり話をしました。そこで感じたのはやはり並々ならぬ按摩、指圧に対する情熱でした。また同業者同士、技術論や学校のことの深い部分まで話をしました。細かい点は書きませんが、私が強く感じたのは常識が違うということ。相手の先生にとって当たり前のことが私にとってはピンとこない。この技術の方があの技術よりもずっと難しい、という。その意見が私には納得できない。そうだろうろか。意識したことがないな。この違和感を素直に打ち明けて、もしかしたら視覚障害者の手技はそうなのかもしれないという推察を打ち出しました。あるいは訪問マッサージをする場合はそうなのかもと。京都仏眼のルーツ、そして実技をメインで習った先生が視覚障害者であったということから考えました。お話した先生もそうかもしれないと答えます。

また初耳だったのが関西伝統指圧という単語。20年以上この業界にいますが初めて聞いた言葉でした。親指の指腹ではなく指尖で圧を入れる、片方の膝をベッドに乗せて圧を入れる、などの情報を得ました。私も術者ですから言葉だけで想像がつくのですが、これも私が習った指圧ではないものでした。奇しくも先日のS&Tという社交ダンスイベントにおいて長生学園の先生と話す機会があり、そこでも関西伝統指圧という言葉が出てきました。長生学園の先生から関西伝統指圧は術者の体が遠いという情報を得ます。こんな短期間でそれまで知らなかった技術(用語)を立て続けに耳にするとは。ネット検索をして調べてみました。

 

今回、一切実態を知らなかった京都仏眼のことが断片的ですが知ることができました。また関西伝統指圧という情報も。このことを踏まえて今後もあん摩マッサージ指圧の研究を進めていこうと思います。どこかで関西伝統指圧を体験したいですし、京都仏眼卒の先生の手技も受けてみたい。新たな発見と新たな疑問が生まれた京都での会談でした。

 

甲野 功

 

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