開院時間
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最近よく当院に勉強に来る来春鍼灸マッサージ専門学校に進学するプレ学生さんを招いて「卒業後の進路」について話をしました。
まだ入学もしていないのに卒業後のことを話をしてどうするのだ、という気もしますが。現在、会社員で先々の情報を知りどのような専門学校生活を過ごすのかを真剣に考えていらっしゃいます。私自身もやりたいことがはっきりしていましたが、卒業後のことというより業界のことをほとんど知らない・調べないまま国家試験を迎えてしまったことが、今となっては悔やまれます。最終的な到達地点は同じだとしても学生のうち、若いうちからきちんと考えておけばよかったなと。私が専門学校に入学したのは26歳のとき。今となれば若くてあまり後先考えてはいませんでした。まだまだ若気の至りという感じで。一方、今回も参加された方は私の時より社会環境が変化しています。あの頃はここまで物価高ではなかったですし、また少子高齢化も進行していませんでした。これからあん摩マッサージ指圧師、鍼灸師を目指すというのは20年前の20代半ばの私とは違うことだらけ。これまでの経歴・職歴を振り返りつつ話す内容を構成しました。
参加者は会社員ということで他業種を経験しています。私より一般企業のことはよく分かっていることでしょう。それを踏まえて内容を詰めてみました。まず本題に入る前に実際にあった開業事例を紹介しました。これは私の知り合いのことで、開業の経緯、状態を紹介しました。外側から客観的にみた事例。このあとに私自身の経験・体験が続くので対比として出しました。この業界の特殊な点を紹介しました。
続いて私が大学を卒業して新卒社会人になってからの話。このエピソードは会社員からこの業界に入ろうという方には非常に興味深くみられます。現代の日本ではメジャーといえる4大卒から企業に就職。そこから大きく異なる鍼灸マッサージ業界にいかにして向かったのか。開業権がある業種ゆえに、いつかは開業、自分で始める、という感覚があるこの世界。サラリーマンからどうして。また私の場合、新卒で入った会社を辞めたのが24歳と若い。社会人3年目のことでした。どうしてなのか。それから進路をどう選択したのか。そういった実体験が会社員から専門学校入学をする方々にとても参考になるようです。
半導体商社という企業を辞めて民間の整体学校に入学し、学校付属のリラクゼーション店からキャリアが始まります。それ以外に3店舗のリラクゼーション店をバイトで渡り歩きます。鍼灸マッサージ専門学校に在学中もそれが続きます。なぜ鍼灸院や接骨院などでバイトしなかったのか。在学中はどのような考えをしていたのか。来年の春から専門学校に入る方に(20年という時代の差があるのですが)、体験談として紹介します。卒業後の進路も気になりますが、何より在学中の身の振り方が直近で悩むところ。話が全部終わったあとの質疑応答でも参加者からどういう仕事・バイトをしたらいいのだろうかという話題になりました。
そして国家試験が終わり、鍼灸マッサージ新卒としての就職活動のこと。私の場合、とてものんびりしていて国家試験が終わり自己採点が確実に合格しているだろうと判明してから就職活動をしました。今の学生さんはもっと早い段階で就職先を決めていることが多いと聞いています。どういう観点で就職活動をしたのか。どこの職場を応募したのか、合格したのか。最終的に選んだ決め手は。何を狙っていたのか。このような背景を説明します。私の意図としては、何となく就職活動するのではなく考えを持って取り組んでほしいということ。それまで全く就職活動をしていなかった私ですが何も考えていなかったわけではありません。むしろ専門学校入学前から方向性がはっきりしていてぶれていなかったから直前でも良かったのです。参加されるプレ学生さん達はまだまだ資格を取ってやりたいことが曖昧というか固まっていない感じです。学校が始まると毎日の勉強についていくのはなかなか大変です。私の頃より学ぶことはかなり増えていますし、試験の難易度も上がっています。目の前の勉強にあたふたするだろうと予想すると、入学前の段階でしっかりと考えるきっかけを作ることが良いのではないかという目的が今回のセミナーにあります。
そして新卒のルーキー鍼灸マッサージ師として就職してどうなったのか。新人時代、分院立ち上げメンバー時代、中堅時代、幹部職時代と分けて説明しました。こうすることで見習いのようなど新人から現場責任者の副院長になるまでの段階を、私の経験を通して想定してもらうのです。プレ学生さんからすると開業して10年の先生というように見られますが、もちろんキャリアを積んだ結果今がある。免許を取って就職してどう成長していったのかを知ってもらうことで、いきなり今の立場になったのではないという当然のことを理解してもらいたかったのです。これまで何度も当院で話を聞いてきた参加者の一人は、こんな新人時代を経験したのですね印象が変わりました、と感想が漏れていました。またこのときに柔道整復専門学校に進学して学生と現場の二足の草鞋を履くことになる経緯、その生活がどのような効果をもたらしたのかを伝えます。卒業後の進路として考えると就職とともに進学という選択肢がここで登場するわけです。
柔道整復師国家試験を直前に控えた時期に職場を退職。国家試験に専念します。そして柔道整復師国家試験を終えて。今度は新卒柔道整復師として新たな就職活動です。大学を含めると3回目の新卒就職活動でしょうか。このときにどのような気持ちだったのかを説明します。柔道整復師としてどうやっていきたいのか。そしてこのとき大きな出来事として東日本大震災があります。国家試験当日から5日後のこと。東北はもちろん東京も大きな影響を受けて想定していた就職活動はできるはずもなく。3月中は混乱が続きました。この未曽有の震災が考えを大きく改めることになりました。その後、自宅からほど近い新宿区のクリニックに柔道整復師として就職。しかし職場に問題があり1年で退職し鍼灸マッサージ教員養成科への進学を決意。同時に出張専門で独立することになります。これ以前は自分自身のことで進路を決めてきましたが、社会状況(外部環境)という自分以外のこと(内部環境)で進路が左右されたのです。大学新卒2年目でITバブルが弾け、米国同時多発テロ事件が勃発しましたが、そのときとは比べ物にならないほどの影響でした。職場は住居の近くに。地域密着。このような気持ちになります。
就職したクリニックも大きな問題がありのちに閉院します。その状況を察知した私は母校の鍼灸マッサージ教員養成科進学を決意し、また出張専門という業態で独立することになります。それから2年間の学業を経て、他県の大学附属病院の臨時職員(週1日勤務)と現在のあじさい鍼灸マッサージ治療院を開院することに。
このような実体験を紹介した上で専門学校卒業の進路について解説してきます。まず就職が最も多いので就職先におけるジャンルを4つ紹介しました。それが臨床、教育、研究、その他です。臨床分野は患者さんに対して施術をする職場。その中でも職種の区分と職場の区分を分類分けして各特徴を述べます。私の職歴からどこに分類されているのかを話しながら。メリット、デメリットなど。また雇用主の本音、従業員の心得についても。一般企業とはやはり違う点があることを説明します。教育分野は何かを教えるという職場。一番は専門学校などの鍼灸マッサージ師養成施設の教員。非常勤講師、私塾を開く、コンサルタント業をするといったものもこの分野に入ると考えています。研究分野は大学や研究機関に就職する場合と一臨床家として在野の研究者として研究する場合があると伝えました。最後にその他として経営者や他業種への就職など数は少ないですがパターンがあることを述べます。
就職以外の進路も紹介します。上に挙げた教員や研究職だと教員養成科進学や大学・大学院進学が必要になることも。進学だと柔道整復科、教員養成科。これは私の実体験。また他の医療資格(看護師、薬剤師、理学療法士など)を取るために専門学校に進む、あるいは研究のため大学や大学院へ、という。他にも鍼灸師の研修機関があることを紹介しました。
さらに既に社会人経験を積んでいる参加者のために今後の業界はどのような状況になるのか。PEST分析や我々の仕事はAIや機械に奪われるのか?といった話題も取り上げます。そしてキャリアを積む上で段階(ステージ)を想定してどのようにそのステージを登っていくのか。ときに人生の棚卸をして自己分析をしてみることを勧めます。(※このパートは作成資料が更新されていないものを本番で出してしまって、後日資料を送りました。)
このような内容を話したあとは質疑応答と雑談。参加者は話を聞いて自分ならどうしようと考えてもらう、意見を述べる。ディスカッションしました。参加者は既にプレスクールが始まっており月に1回の授業があるとのこと。勉強が本格的に始まる進学前に、勉強以外のことを考える暇があるうちに、やっておいて良かったのではないかと私は思います。ご参加ありがとうございました。
甲野 功
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