開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
私が生まれ育ち、今も住む東京都新宿区には新宿御苑という有名な庭園があります。新宿という大都会にありながら広大な敷地を誇り、フランス式庭園、日本式庭園、原生林など多数の様式を持つ、文字通り都会のオアシスです。海外観光客からも大人気で繁華街からすぐに行ける自然と背景に新宿の高層ビルがあるミスマッチさが味わい深いです。そしてかつての都だった京都にはそのようなところがいくつかあります。高校生の頃から頻繁に京都を訪れていますが、特に庭園として感動したのが平安神宮神苑です。天龍寺の庭園も素晴らしいのですが、こちらはそれ以上に良かったです。
平安神宮。巨大な鳥居と広い広場が特徴的。その平安神宮社殿を取り囲むように3方にあるのが平安神宮神苑です。外からはほとんど見ることができず、別途拝観料を支払って入ります。神苑は平安神宮社殿を取り囲むように南神苑、西神苑、中神苑、東神苑の4つの庭からなります。明確な区分けはないので広い庭園が社殿の3方を囲んでいる池泉回遊式庭園です。その総面積は約33,000m²(約10,000坪)ですから相当な広さです。その広さゆえに様々な景色が見られます。昭和50年(1975年)には平安京千年の造園技法の粋を結集した庭園として国の名勝に指定されております。もとは明治28年(1895年)、平安遷都千百年祭が開催されるにあたり創建されることになった平安神宮の社殿一帯の風致保存のために庭園を築造することになり、造営が企画されました。
入口を通るとまず南神苑に出ます。八重紅枝垂桜の名所として知られます。私が訪れた昨年4月は満開ではありませんでしたが桜が咲いておりました。そして路面電車が展示されております。これは京都市交通局二号電車で現存する我が国最古の車両であり国の重要文化財に指定されております。北に進むと西神苑に。通常非公開の茶席澄心亭が白虎池の前にあります。また桜の先に社殿が見られます。西神苑から中神苑に向かうところには小川が流れています。うっそうとした森に囲まれて小川沿いに道を進んでいくと中神苑の蒼龍池が広がります。蒼龍池には臥龍橋という池の水面から現れる石柱が点在しています。こちらは天正年間に豊臣秀吉が造営した三条大橋と五条大橋の橋脚の石材です。池のほとりには地主社が置かれています。これは平安神宮全体では北東の方向にあり、北東は鬼門といって邪が侵入してくる方向、地主社は鬼門鎮守の役割を果たします。広い池の向こう側には茶店東屋があります。さらに進むと東神苑へ。とても大きな栖鳳池。その景色は見事です。池にかかる橋(橋殿)泰平閣は京都御所から移築された建物物。池の上に立つ姿は背景の東山連山と相成って素晴らしい景色です。また対岸には尚美館(貴賓館)が見えます。こちらも京都御所から移築された建物。泰平閣を歩くと池の上からの景色が見られます。東神苑の栖鳳池らの景観が圧巻でした。四季折々で美しい姿をそれぞれ見せてくれるのでしょう。
この平安神宮神苑を作庭したのが七代目小川治兵衛。明治から昭和にかけて「植治(ウエジ)」と呼ばれ京都東山界隈に円山公園、無隣庵を始め幾多の名園を残しました。七代目とあるように小川治兵衛は通り名で受け継いで当主になると名乗るもの。七代小川治兵衛は万延元年(1860年)~昭和8年(1933年)を生きた近代日本庭園の先駆者とされます。京都に生まれて明治10年(1877年)に六代目小川治兵衛の養子となり、明治12年(1879年)に七代目を襲名しました。京都他関西の庭園を手掛けていますが、東京都北区にある旧古河庭園も彼の作庭です。大正、昭和天皇が即位する際の各大嘗祭悠紀・主基両殿柴垣や周囲築堤も手がけました。大嘗祭は天皇陛下が即位する儀式で悠紀殿と主基殿の二棟をそのために建てます。我が国で非常に重要な儀式の一端を任される超一流だと言えます。七代目は自然の景観と躍動的な水の流れをくみこんだ自然主義的な近代日本庭園を数多く手がけました。そして、それらを設計段階から資材調達、施工、維持管理まで総合的に引き受けていきました。現在は十一代小川治兵衞を当主とし、長男が十二代目として御庭、三男が十三代目として造園を代表し、その伝統と技を継承しているといいます。
京都は平安京から数えて千年の歴史があります。人も建物も。その両方が顕現したのが平安神宮神苑だと思えます。正直なところ、清水寺や嵐山、伏見稲荷大社らに比べると知名度が劣る平安神宮。そしてそこにある神苑。もっと知られてよい場所だと思います。非常に素晴らしかったです。
甲野 功
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