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~鍼灸学生が登壇したランチョンセミナー~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 学生が登壇したランチョンセミナー
学生が登壇したランチョンセミナー。当院でも良く知っている茂木さんもパネラーに。

 

 

先日参加した令和6年度(公社)全日本鍼灸学会関東支部・(公社)日本鍼灸師会関東甲信越ブロック合同学術集会』。この学会は全日本鍼灸学会関東支部日本鍼灸師会関東甲信越ブロックの共催という初の試みでした。学術団体の全日本鍼灸学会と職能団体である日本鍼灸師会という別の方向を向く団体同士が地方レベルですが合同で行ったのです。この合同学術集会で特に象徴的であったのが昼のランチョンセミナー。鍼灸製品メーカーであるセイリン株式会社が協賛し、お弁当が配布されて食事をとる時間にパネルディスカッションをします。司会に筑波技術大学福島正也先生、日本鍼灸理療専門学校竹津健亮先生が行い、「若手が求める夢のある鍼灸業界の未来」というテーマでした。

 

パネラーとして登壇したのが帝京平成大学4年生の大澤佑斗さん、東京有明医療大学3年生の小曽根ひとみさん、日本鍼灸理療専門学校3年生の西村佑佳子さん、そして大宮呉竹医療専門学校3年生の茂木龍生さんです。パネラー全員が鍼灸学校の学生です。一般演題で学生発表をするのが初めてだった今回。ランチョンセミナーの開催も学生アンケートの結果をもとに学生がパネラーのパネルディスカッションも初めてということでした。鍼灸学会と鍼灸師会が共催する上に学生の発表の機会が与えられる。このような試みでした。

私がこの合同学術集会に参加することを決意したのがランチョンセミナー。ここに茂木龍生さんがメンバーに入っているからでした。茂木さんは専門学校入学前の段階で当院に訪れて業界のことを聞いていました。その後も幾度と勉強に来ていて、3年生となり来年の国家試験に挑みます。鍼灸専門学校に入る前から知っている彼がこのような場に立つとは。感慨深いものがあります。関東エリアの専門学校は20校以上あり、その中から大宮呉竹医療専門学校の茂木さんが選ばれるという。その感情とは別にとても面白い内容だったので紹介したいと思います。

 

このランチョンセミナーのパネラーは所属校が大学と専門学校、それぞれ2校ずつになっています。帝京平成大学と東京有明医療大学は東京にある鍼灸科がある大学です。大学ですから文部科学省の管轄で研究機関としての役割も持ちます。日本鍼灸理療専門学校と大宮呉竹医療専門学校は東京、埼玉にあり厚生労働省管轄の専門学校。職業として鍼灸師を育成することが主目的です。学術団体の全日本鍼灸学会と職能団体の日本鍼灸師会によう合同開催であるように、パネラーも大学と専門学校それぞれから選出されていると思われます。そしてパネルディスカッションのために鍼灸学生を対象にした『鍼灸学生の「いま」に関するアンケート』を実施しているのですが、内容作成において教員が入ると教員の思考が反映されるとして、学生主体で行われました。コーディネーターとして若手鍼灸師の富山雅子先生、難波啓太郎先生が入っています。学生、若手が主体となっています。

アンケートはWeb上で回答するもので、鍼灸学生を対象に26問のアンケート質問があり2週間の募集期間で行われました。その後も継続中であり、開催当日時点で795名からの回答があり、データを解析した時点で768名でした。研究領域ではアンケートの回答数などを“サンプル数”とか“n数”と呼びます。n数=768はかなりデータがあると言えるでしょう。研究データとしても貴重です。得られたアンケート結果を解析して発表し、パネラーが議論していきます。アンケート結果をメモした範囲で書いていきます。

 

Q.卒業後の進路は? A.7割が就職。

Q.どのような分野に就職希望ですか? A.1位、一般の鍼灸院など 2位、大手グループ院 3位、美容系

Q.職場に求めるものは? A.風通しの良い職場、チーム一丸が40% 上下関係、伝統重視が少ない

Q.将来開業したいですか? A.62%が開業したい

鍼灸師の待遇は良いか? はいが10%、いいえが40%

Q.どのように学外で学びますか? A.治療を受けるが65%、勉強会・研修会・アルバイトが45%、学会が15%

Q.研究に興味がありますか? A.70%がはい

Q.この進路を選んだ理由 A.人を助けたいが上位

Q.入学前に鍼を受けたことがあるか? A.70%がはい

Q.あなたにとって鍼灸師とは? A.「専門職」、「治療家」、「サポート役」などのワードが見られた

 

他にもあったのですが私の記録・記憶が曖昧なものは省きました。フリー記述のものはAIによって用語をまとめたそうです。アンケート対象が学生で1年生から3年生(大学だと4年生)となります。免許を取った大学院生や教員養成科学生も含まれているのかは不明です。1年生だと卒業後のことや職場などに関してはよく分からないという回答が多いのではないかと司会の先生が指摘していました。

この結果を踏まえてディスカッションが始まります。学生の意見は個人が特定できないよう配慮してぼやかして書くことを御理解ください。パネラー、司会、会場の先生から出た意見を抜粋し、私が感じたことを加えています。

 

就職や開業については専門学校生と大学生でかなり意識が異なると思いました。就職活動が一般企業のそれとは違い分かりにくい、学生のうちから開業とは?と問うことをしてみるという意見が出た一方、これだけ開業志望が多いとは驚いた、就職は友達がいくところに入るといった意見も。専門学校生は開業に前向きで大学生は研究思考が強いのではないかと感じました。アンケート結果で開業が多いのも単純に専門学校生と大学生の人数差ではないかと私は考えました。在籍している学校の分類は学生の考えに影響するでしょうし、やはり専門学校は何かの職能を得るために入学する人が多いと思います。特に鍼灸は何となくやってみようかなというものではないかと私は考えています。

 

研究については反対に大学生の方が積極的なように感じました。それは専門学生に比べると。大学生のパネラーの一人は入学してから研究に興味が出たと話します。一方、専門学校生は患者さんの説明にエビデンス(≒科学的根拠)が必要と、臨床に主軸を置いた発言がありました。専門学校畑を進んだ私は鍼灸学校、その後の教員養成科でも研究発表をしましたが根底にあるのは臨床現場で役立つ内容でした。午前中の一般口演学生発表を聴くとより根本的な基礎研究に力を入れているという印象を受けました。臨床に使える実験研究となると不確定要素がとても多くなります。基礎研究の方が変数(パラメータ)を絞ることができて研究が比較的しやすい。それが(理系大学生とき研究室で研究したことも含めて)私の経験からの受け取り方です。学会との向き合い方という話題になったときも大学生からは参加費用の価格について意見があり、参加することに前向きであると思いました。

 

会場にいた臨床鍼灸師の先生からは、卒業に開業して市井の患者たちを助けてほしいという声がありました。それに対して専門学校生からは、地域に根付いた鍼灸師が大切、就職するも鍼灸活動を辞めてしまい(免許を返納しない限り名簿に残るので)統計上は数が増えているが実際はギャップがあるのでは、だから学会や業界団体がそのギャップを埋めるのがいいのではないか、といった意見がありました。こういったところも学生のうちから向いている方向性を感じました。

 

あなたにとって鍼灸師とは?や学校入学前に鍼灸(あん摩マッサージ指圧も)受けたことがありましたか?といった質問がパネラーの学生達にありました。それぞれ考えがあり、過去のいきさつがありました。学校が異なる4名の学生が登壇し、会場にいる業界関係者の前で堂々と発言する姿がまぶしかったです。このようなチャンスを与えた運営者、協賛したセイリン社の英断が素晴らしいと思いました。私自身も数年前から学生サポート活動を続けており、これからの業界を考えると優秀な若手が誕生することが“希望”になります。個人的にはこれまで専門学校生ばかりと接点があり大学の方は縁遠かったです。今回の合同学術集会に参加したことで大学のことが少し分かった気がします。専門学校と大学、そして学会と師会、更に臨床に出ている鍼灸師らが“若手が求める夢のある鍼灸業界の未来”を創っていければなと思ったランチョンセミナーでした。

 

甲野 功

 

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