開院時間
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今年は鍼灸マッサージ専門学校進学希望者、すなわちこれから鍼灸マッサージ学生になろうというプレ学生さんにセミナーを開いたり、相談に乗ったり、イベント参加のお手伝いをしたりしています。このような活動は以前からしていましたが今年は特に活発に。具体的に進路先の学校選定について私が知っている情報(といってもネットに公開されているものがほとんどですが)を提供し、業界の状況を話し、今後の将来予測を伝えるということ。元々、鈴木真季さんという一般の方から進路先を相談するメールが届き対応したことから始まった活動。資格、学校、入学後のセミナーと乗りかかった船という感じで専門学校入学後もサポート活動をしてきました。鈴木真季さんは資格を取り、現在は横浜元町で開業しています。その後も色々と縁があって学生さんの手助けになることをしてきているのですが、年々、入学前に業界研究を深めている人がいるなという感想を持ちます。
いつの時代も用意周到に事前準備をしてから物事を始める人はいることでしょう。私の場合も鍼灸マッサージ専門学校に入る前にだいたい2年間はかけ、学校見学も複数した上で当時に東京医療専門学校(現・東京呉竹医療専門学校)鍼灸マッサージ科に入学しました。あん摩マッサージ指圧師免許が欲しくて、先々の事を考えて鍼灸師も取れる鍼灸マッサージ科の入学を視野に入れて。受験対策のため大学までほぼ勉強してこなかった文学史や生物の勉強をしました。それらの勉強は結局必要なかったのですが。その一方で特に業界の事を調べず、鍼灸師になりたい、学校は近いところ・学費が安いところでいいや、学校見学もほとんどしない、という感じで進学する人も少なくありません。そして私が出会った中で少なくない人が進路決定を誤った、学校選びをもっと真剣すれば良かったと悔やむのです。新型コロナ流行前から失われた〇十年といって経済が停滞しており、昨今の円安、物価高騰も加わり行動を起すのに慎重になっていると思います。特に社会人経験者はジョブチェンジとして鍼灸やマッサージの道に進もうと進学するわけで、失敗はできないという意識が高いでしょう。そのような会社員から鍼灸マッサージ業界の転身を考える人がよく相談に来ます。私自身が大学卒業後一般企業に就職し、脱サラしてこの仕事に就いていることもあり。
学生支援の流れは以前よりずっと波及している実感があり、母校の東京呉竹医療専門学校でも私が入学した20年前とは学生のためにプラスの授業がたくさんあると感じます。プラスというのは国家試験には出ないが将来必要であろうという意味。具体的には私も講師を勤めた開業支援の授業。開業、すなわち経営・運営のことは専門学校の指導要領には入っていませんし、もちろん国家試験で問われることはありません。専門学校が授業で教える義務はないのです。しかし学生のためにあった方がいいということで数年前から実施されています。他にも税の話とかも。私のときは、専門学校は職業訓練校だから自ら学びなさい、国家試験対策の勉強はしっかりするから実技を学びたければ勉強会に行くなりバイト先で学ぶなり自分でやっていけ、という態度でした。今はとても専門学校(この場合は東京呉竹医療専門学校になりますが)は手厚くしているなと感じます。
更に先日参加した地方支部同士の鍼灸学会・鍼灸師会合同学術集会でも、テーマは卒業後のことで鍼灸学生が卒業したあとをどうしたら良いのかを考える内容でした。20年前の感覚だと、そんなことは自分で考えろ、という気がします。卒業教育に開業あるいは就職。卒業後の進路を、キャリア形成をどうしたらいいのかを学会も師会もサポートしようとしていると感じたものでした。ちょうど私の方でも11月16日に鍼灸マッサージ専門学校卒業後の進路についてプレ学生さんに話をしたところ。奇妙な一致ですしリンクしているのではないかと思いました。
厚生労働省管轄の専門学校は職業、生業として鍼灸マッサージをしていくことを念頭にしていると思います。文部科学省管轄の大学はそれが研究に向いている。視覚支援学校の場合はよりシビアに視覚障害者の方が社会で仕事できるようにという。卒業後にどのようにキャリアを積んでいくのか。人生設計をしていくのか。簡単な課題ではありません。そして最近特に私が思うようになったのは、それをなるべく早い時期に考えておいた方がいいということ。
私も経験がありますが専門学校なら3年生の今くらいは卒業認定や卒業試験、来年の国家試験本番に向けて勉強、試験対策で手一杯です。私の時は11月と12月に二度の卒業試験があり、国家試験と同じ問題数、解答時間で行います。全体でも科目ごとでも6割以上正解しないと追試験になります。全体正答率をクリアしても科目別で落とすことがあるのでクラスの3分の2くらいは追試験に引っかかりました。かくいう私も1次も2次も科目別で1科目追試験になりました。鍼灸マッサージ科、柔道整復科を含めて座学試験で追試験になったのはこの2回だけ。それくらいシビアです。その前は実技認定試験があり、夏過ぎくらいから試験モードに頭が切り替わります。卒業試験をパスすれば2月末の国家試験に向けて全力に。卒業後のことまで考えている暇がなかったです。更に平成30年からカリキュラムが改正されており、私が学生の頃よりも学ぶことは大幅に増えています。下手をすると3年生1年間は国家試験対策に費やされるという感じになるとも。そうなると比較的時間にも精神的にも余裕のある1、2年生の時に卒業後のことを考えておいた方が賢明なのではと。
私の場合はやりたいこと、進みたい道が専門学校入学前からはっきりしていました。その代わり卒業後進路については具体的に考えていませんでした。国家試験が終わってから就職活動をして3月の専門学校卒業式までには進路を決めたいなと思っていましたし、実際にそうなりました。今だとなかなかこのようなことはできないしやらないでしょう。
そんな私がプレ学生でも現役の学生さんにも卒業後の進路として勧めるのが、もう一つ学校に行くということ。具体的には他の医療職種(柔道整復師、看護師、薬剤師、理学療法士など)や教員養成科、大学・大学院といったもの。一度国家試験をパスし免許を取った上で、更に進学し働きながら学ぶ。これがとても効果的だと私は考え、選択肢として紹介します。
私は便宜上、セカンドスクールと称しています。似たような言葉としてダブルスクールというものがあり、これは一般的に知られています。同時に二つの学校に通って勉強することをダブルスクールといいます。例えば午前中(日中)は鍼灸科で学び、夜間柔道整復科にも行く。あるいは大学で鍼灸科に行きながら夜間にあん摩マッサージ指圧師の学校にも行くとか。このような状態をダブルスクールと言います。ダブルスクールは割とあることで珍しくはありません。以前紹介した元プロ野球選手は鍼灸科と柔道整復科のダブルスクールを3年続けて、3年間ではり師・きゅう師・柔道整復師の3つの国家資格を取得しました。私の教員養成科同級生にもこのようなダブルスクール経験者がいます。一方、セカンドスクールは一つの専門学校を全うしてから別の学校に行くというもの。「同時に」ではなく、「次に」です。
セカンドスクールは私の実体験です。2004年に東京医療専門学校鍼灸マッサージ科に入学し、2007年に卒業、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師になります。鍼灸整骨院に就職して2008年に同校柔道整復科に入学し2011年に卒業、柔道整復師の資格を得ます。卒業してから次の学校に入学するというスタイル。足掛け7年であん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師の4資格を取りました。これをダブルスクールで頑張れば昼間に鍼灸マッサージ科、夜間に柔道整復科に入り、3年間で同じように4資格を取ることが可能です。たらればの仮定の話ですが、セカンドスクールにしたことで私は大いに成長できたといえます。まずあん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師を取った時点では柔道整復科進学など全く考えておりませんでした。すぐに働いて学費を取り返そう、臨床経験を積もうと意気込んでいました。フルタイムで朝から晩まで整骨院では働くことで知識の足りなさを痛感するとともに、柔道整復師もあった方が絶対にいいなと考えるようになりました。職場の院長の依頼もあり、柔道整復科への進学を決意しました。このときの決断を思い返すと、本当に柔道整復師の資格が必要だと考える時間があったこと、それが大切でした。学生ではなく免許を持ったプロとして鍼灸やマッサージを臨床で用いて患者さんと向き合う。その日々からもっと勉強を資格をという考えに至ったのです。当初は柔道整復師など必要ない(というより資格の存在自体知らなかった)と思っていたのです。現場に出て、それもバイトとか見習いとかではなく一人の術者として、必要かを判断した。そのため進学に対してとても前向きで意欲がありました。右も左も分からないではなく、現場を知った上での進路決定でした。
私はあん摩マッサージ指圧師が取りたくて専門学校に進みました。鍼灸はついでに取ったのです。同じ3年間で取れるからという理由で。その分、あとで苦労するのですが。ダブルスクールだと同じような状況になるのではないかという懸念があります。そしてセカンドスクールを推すのは私がこの職業で大きく成長できたのが柔道整復科に通う3年間だったから。午前中に柔道整復科で勉強し、午後から職場に出て仕事をする。インプットとアウトプットが両方できました。柔道整復科では柔道整復理論や包帯実技といった柔道整復師特有の科目もありますが、大部分は鍼灸マッサージ科でならった現代医学分野が被ります。つまり復習になります。そのため鍼灸マッサージ科のときよりも授業を理解できますし余裕がありました。更に習ったことを午後からの職場ですぐに試すこと、確認することができます。直接関りがないように見えても知識が深まることで技術に反映されるのです。鍼灸をする上で解剖学、生理学、病理学を再度かつより深く学んだことが非常に良かった。反対に学業面でも、理解が浅かったことも現場で患者さんを診ながらだと、より分かるようになるのです。柔道整復科の成績は非常によく特待生をもらうほどでした。週6日働きながらも。
学習と学業がいいバランスでできた時期でした。学生になることで一日中職場にいるという生活から解放されたことも大きかったです。朝8時くらいに出勤して夜10時過ぎに退社するような職場でしたから。また学生と仕事と強制的に頭を切り替える環境もプラスに働きました。午前中は生徒で、午後は管理職という状況だったのです。
もう一つ良い点は既存の技術(資格)を外側からみる機会を得ることができます。鍼灸と柔道整復。柔道整復科で学ぶことで鍼灸というものの存在がより明確になりました。柔道整復科は急性外傷の勉強を深く行います。そうすることで鍼灸は主に慢性疾患に適したものなのだと気付くのです。柔道整復師の方が東洋医学の勉強が無い分現代医学を学ぶ時間が長いため鑑別の能力は高いのだな。積極的に患者さんに治療介入できるのは鍼灸、マッサージの方が上だな。このような学びというか気付きを得ます。他のことを勉強するから既存のものがよく分かってくる。それもセカンドスクールの利点でしょう。
私の場合は更に教員養成科に進学したのでサードスクールでした。もちろんここでもより一層の飛躍になりました。可能であれば更に進学するというのは卒業後進路の選択肢として持っておいていいと思います。
もちろん問題もあります。何よりも金銭面。授業料がかかります。また付随する交通費、食費、交際費、勉強会の参加費や教材費まで。働いて稼ぐ時間が勉強して使う時間に変わるのです。様々な意味で金銭面は大変でしょう。私の場合も柔道整復科も教員養成科も1年間空けて進学しています。学校を卒業するたびにもう勉強は終わり、という気持ちでした。それがやはり必要だと1年間働いて決意して進学するということを繰り返しました。それは大学卒業後、新卒社会人になるときから。結局、大学卒業後から複数の専門学校を渡り歩いて今に至るということになったのです。金銭面の大変さはもちろんあるのですが、そのプレッシャーから勉強をしよう、学ぼう、今後学費を回収しようという意気込みがあり勉学に励むことができるという良い面の副次作用もあるものです。
今月も教員養成科進学を考えている鍼灸学生さんが来院して先輩の話を聞くという予定があります。専門学校でなくても通信の大学院や卒後研修といったものでも構わないと思います。資格免許を取った上で、プロとして働いた上で、更に学校などで学ぶ。回り道のようで実は効率の良い進路なのではないかと考えます。
甲野 功
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