開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
子ども達とよく外食に行くのが牛込柳町駅近くにあるサイゼリヤ。子ども達が生まれてから利用する飲食店では圧倒的に1位でしょう。ファミリーレストランことファミレス。親になるとファミレスのありがたみが本当に分かります。赤ちゃん、乳幼児、低学年児童。小さな子どもがいると入れない、いけない場所はかなりあります。長女が生まれてそれを痛感し、あじさい鍼灸マッサージ治療院は赤ちゃん連れでも入れる場所にしようと決めました。なお開業構想時にはこのようなことは一切考えていませんでした。
牛込柳町駅にサイゼリヤができたのは21世紀になってから。都営大江戸線開通後。それまでは大久保通り沿いにジョナサンがあり、地元民の社交場という感覚でした。小学校、中学校時代。大学になり地元で集まるというときはジョナサンに集まる。その後大久保通りのお店は無くなり外苑東通りに現在くすりの福太郎となっている2階にジョナサンができました。それからサイゼリヤができ、外苑東通りのジョナサンも閉店しました。このエリアで唯一のファミレスであるサイゼリヤは非常に貴重です。それ以外ですと神楽坂駅や市ヶ谷駅までいかないとありません。
子どもが生まれる前から利用しているサイゼリヤ。創業者は東京理科大学を卒業しています。私は東京理科大学理学応用物理学科を卒業。サイゼリヤ創業者である正垣泰彦氏は東京理科大学理学部物理学科卒。世代は全然違いますが大学の先輩。それも同じ理学部で物理系。おそらく東京理科大学OBでもトップ5に入る著名人でしょう。そのような関係もあり、サイゼリヤのことが好きです。
最近サイゼリヤ関連のビジネス書籍を購入しました。
サイゼリヤ元社長が教える年間客数2億人の経営術
堀埜一成著 ディスカバー・トゥエンティワン
この本は正垣泰彦氏ではなく13年同社社長を務めた堀埜一成氏が書いたもの。既に外食チェーン店で名を馳せていたサイゼリヤがより成長する過程が記されています。社長在任期間が2009年~2022年ということで、牛込柳町にサイゼリヤができた時期頃あたりからと被ります。サイゼリヤの経営について、利用者としても個人事業主としても興味があり手に取りました。創業者が東京理科大卒で数学的、理科的な経営をしているという話は聞いたことがありました。キッチンには庖丁がない。スタッフの導線を徹底的に考えて配置している。コロナ禍で感染予防のためにお金のやり取りを減らすために端数の出ない料金体系に変えた。などなど。どのような取組をしているのか本書から学ぼうと思ったのです。
読んだ感想は。予想を遥かに超えたデタラメな会社だったのか?!という驚きがまずありました。それは著者の堀埜氏が書いてあるとおり。飲食業なのに原価計算をしていない。飲食業は原価率が高いためいかにそこを抑えるかが肝だということは私でも知っています。サイゼリヤには原価計算をしていなければ、ろくに資料が無かったのだとか。報告書もなかったとか。極め付きはノルマがなかった。どれくらい売上を出そうという目標がない。信じられません。また創業者がそういうのを嫌ったため、社内政治が一切ない「性善説で成り立っている会社」だというのです。創業者が社内政治を嫌うというのは研究に没頭する職人気質の東京理科大生を彷彿させるので納得ですが。私は2年半と短い期間ですが半導体商社の一般企業で働いた経験があります。そこでも毎日、報告書を作り、営業はノルマを課せられ、上司の動向に敏感でまだまだ当たり前にパワハラがあった職場でした。会社員経験と照らし合わせてみても異様な会社です。
また、現在も行っていないこととして広告をしないことが目を見張ります。確かにサイゼリヤのテレビCMを観た記憶がありません。よく覚えているのは私がいつも見ている経済番組『カンブリア宮殿』に出演したとき。それ以外はバラエティ番組や情報番組に取り上げられますが広告らしいものは見たことがありません。チラシや駅の広告も。あの日本人なら誰でも知っているであろう日本マクドナルドはオールシーズンCMや広告をしています。チキンラーメンやカップヌードルの日清もそう。サイゼリヤは広告をしないのです。広告費をかけず浮いた本来かかるはずのお金を原価に回し低価格を実現しているのだとか。これは当院でもプリンタを利用しているbrotherと同じやり方です。
更に現在では必須と言えるSNSにも無頓着。初めてのデートでサイゼリヤに連れていく男はアリかナシか、というテーマで大論争が起きたSNS。そのようなときもサイゼリヤは一切関わらず。「ユーザー体験はお客様自身がつくるもの」として利用の仕方、アレンジメニュー、SNSでのクチコミや評判、何もかも客に委ねていると言います。企業としては異例でしょう。
社内に目を向けると、本書の目次から抜粋しますが
・儲けようという気がない
・他社と比べる発想がない
・記録や履歴を残す習慣がない
・新人教育の仕組みがない
・値づけの根拠がない
と企業の常識のようなものが欠落した会社だったことが伺えます。それはやるでしょうということをしていないのです。これでどうして成り立つのか?その答えは根底に“すべては「人のため」に”という精神があるからです。サイゼリヤは日常楽しめる食事を提供することを是としています。それが人=富裕層ではない一般庶民も含めた人々のためだと。いつでも誰とでも日常生活に溶け込んだ場所であろうとする。本書で特に印象的な場面があります。著者を引き抜くために高級ホテルのディナーに誘い出された料理を食べて、「これ、うまくないだろ?」と言われたというのです。もちろん不味いはずはないでしょう。ただサイゼリヤとしてはこの料理は「売るための料理」「高いお金を出させるための料理」だからおいしくないし毎日食べられないのだという。サイゼリヤの考えるおいしい料理とは毎日食べられる普段つかいのもの。「おいしさ」の定義が違うのだとこのとき著者は知ったといいます。その考えが唯一無二の外食チェーン、否、普段使いのレストランである所以のようです。また目次の抜粋ですが以下のようなことを心掛けています。
・ライバルは見ない、見るのはお客さまだけ
・「当たり前品質」を当たり前に提供する
・「たまたま」を狙わず、「いつも同じ」を徹底する
・いちばん売れているハンバーガーがいちばんおいしいわけではない
おいしさの定義が違うという視点は非常に勉強になります。見ている方向が違う。ミシュラン星付きの個人レストランとは方向が違うというわけです。
このような社風のサイゼリヤを堀埜氏はどのように変えていったのか。外部から引き抜かれた外様社長は、それまでできていなかったことを実行に移して実現していきます。化学プラントの生産技術者だった堀埜氏は生産体制を確立していきます。岩だらけの山を切り拓いてレタス栽培に挑戦し、米作りの研究をし、短期間しか使われなかった高価な農業機械の生産性を上げ、工場での加工を進めます。特にオーストラリアに工場を作り生産性を高めていくのです。サイゼリヤの理念以外は全部変えると改革していくのです。店内も掃除しやすいように改装し開店準備時間を短縮。キッチンスペースを狭めて売上を生み出す客席を増やします。やってこなかった商品利益率を計算し、情報を紙に残すようにしていきます。そして前職の経験を活かし店舗で使用する食材までさかのぼって改善を積み重ねていくのです。自社で加工工場はおろか農場も用意して。堀埜氏はサイゼリヤをレストラン版のユニクロ(製造小売業)としています。ユニクロも生地から開発して服の製造、販売まで行っています(SPA=アパレル版製造小売業)。そのレストランバージョン(SPF=フード版製造小売業)であると。
このように社長に就任した堀埜氏はサイゼリヤをバージョンアップしていきます。借金を一気に返済するために禁じ手としているテレビ出演を行い認知度や売り上げを引き上げます。マスメディアに出ると一気にお客さんが増えてしまうためスタッフは日常利用しているお客さんに迷惑をかけてしまうのでまずやらないのです。中国への海外進出も成功させます。技術を盗まれないようにする、模倣店に負けない。中国人の不買運動の対象にされないようにする、など工夫を重ねます。
そして2009年から2022年の社長在籍期間に2つの大きな困難に直面します。一つが東日本大震災でもう一つが新型コロナウィルス。二つの異なるタイプの大災難に対応していきました。私もこの2つの出来事には大きな影響を受けました。東日本大震災では直接の被害は無かったのですが開業に対するメンタリティを大きく変えることに。新型コロナは当然ながら大きく売上が落ちましたし数年間影響を受けました。多くの飲食店が大打撃を受け、神楽坂にある個人の名店が複数閉店してしまいました。その苦しい環境を乗り越えていつも利用してきた牛込柳町のサイゼリヤが閉店せずに済んだのも経営手腕のおかげでしょう。サイゼリヤのことを学んだことで私の業界にも見習うことが多いと思いました。個人店とチェーン店。ここを整理することで卒業の進路について参考になりそうです。それはまたの機会に。
身近にあり、大学の先輩にあたる人が創業したサイゼリヤ。その理念、経営手法を知ることで新たな学びと気付きがありました。
甲野 功
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