開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
昨日は鍼灸専門学校2年生の方が当院へ卒業後の進路について相談しに訪れました。この方は先日、当院で教員養成科について話を聞いております。現在鍼灸科の2年生で卒業後に呉竹学園東京呉竹医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科に進学するか悩んでおり、更に話を聞きにきたのでした。
状況をもう少し説明します。まず私は2004年に東京医療専門学校(現東京呉竹医療専門学校)の鍼灸マッサージ科に入学します。卒業してあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師免許を取得し東京都北区の鍼灸整骨院に就職します。2007年のことでした。それから2008年に同校の柔道整復科に入学し、午前中は専門学校、午後は臨床という環境になります。柔道整復師国家試験を前にした2011年1月末に職場を退職し国家試験に合格し柔道整復師に。東京都新宿区内のクリニックに新卒柔道整復師として就職します。諸事情により栗肉を退職し2012年に東京医療専門学校の鍼灸マッサージ教員養成科(以下、教員養成科と表記)に入学します。母校の教員養成科は“10年間の修行を2年で”を謳い文句に2年間で“食える鍼灸師”を育成することをモットーにしています。長女が生まれた年でしたが2年間を投資と考えて、技術、知識、人脈、そして鍼灸マッサージ専門学校の教員免許を得て卒業後に開業しようと心に決めて入学したのでした。同時に出張専門という業態で独立します。そして教員養成科を卒業と同時に栃木県にある大学病院麻酔科ペインクリニックで、週一日ですが、勤務が決まります。そして2014年5月にあじさい鍼灸マッサージ治療院を開院しました。
当院を始めて数年してから鍼灸学生さんや進学希望のプレ学生さんの相談、支援をするようになります。先日、教員養成科について知りたいという声を耳にして「教員養成科とは?」というテーマで話をした次第。その方が東京都内では三択となる教員養成科進学先で私もでた東京呉竹医療専門学校の教員養成科進学を前向きに検討しているとのことでした。そこで私の知り合いに来年から教員養成科に進学する鍼灸マッサージ専門学校3年生の人がいるので、意見を聞けるように取り計らいましょうかと提案します。来年教員養成科に進学が決まっているのがよく当院に来ている茂木龍生さんという方。彼は先月開催された全日本鍼灸学会関東支部・日本鍼灸師会関東甲信越ブロック合同学術集会のランチョンセミナーに登壇した学生の一人。大宮呉竹医療専門学校鍼灸マッサージ科3年生です。彼は大学4年生の時に大宮呉竹医療専門学校進学が決まった段階で当院を訪れて鍼灸を受けつつ業界のことを聞きにきました。そこから幾度と勉強会や練習会、共に学会やイベントに参加するということをしてきました。10年前に教員養成科を卒業した私の(OBとしての)情報も大事ですが、これから進学する茂木さんの意見も貴重であると思います。何より現在進行形の学生で来年2月に国家試験を控えている茂木さんの意見。どうして専門学校卒業して続けて教員養成科進学を決めたのか。また東京呉竹医療専門学校の教員養成科なのか。
茂木さんに事情を説明すると快諾してくれました。私は相談者とのセッティングをします。当人同士がメール等で質疑応答をすればいいかなと思いましたが、私も同席して対面で話をした方がいいだろうということになり、当院に集まってもらいました。当日は相談者の関係者も加えた4名で座談会のような形になりました。
軽く自己紹介を済ませてから。相談者が茂木さんに進学の理由や、それを決意した時期などを質問。それに対して茂木さんが回答。私が補足説明として専門学校卒業後の進路や就職先の分類した情報を出します。そこから各々の意見、希望、現状確認などが飛び交い2時間以上の会になりました。話すことで相談者は何を課題にしているのか、将来したいこと、置かれた環境などが明確になってきます。1学年上で活発に活動している茂木さんの学生としての意見。私は卒業後の進路で考えられるパターンと相談者にとって希望的な観測を紹介。同伴した相談者知人の一般利用者視点による感想。意見が飛び交いました。ひとまず今年と同じであれば来年の秋くらいに教員養成科入試があり、年が明けて年度が変わったら学校見学をして進学を決めるかどうか判断する。それまでに色々な先生に会って、施術を受けたり意見を聞いたりして参考にするという着地点でした。散会後に相談者からは面白かったというメッセージを頂きました。
鍼灸師のキャリア形成。これはここ数年、業界のトレンドになっている気がします。上で紹介した鍼灸学会・鍼灸師会合同学術集会でも卒業後にどのようにキャリアアップをしていくのかがテーマでした。鍼灸師は免許を取ってからどうしたらいいのか。非常に自由度が高いというか属人的というか、これだという王道の進路がありません。医師ならば国家試験後も研修医として各科をローテーションでまわります。看護師も理学療法士も病院での研修制度があります。ところが鍼灸師はこうしましょうという研修内容が定まっていません。学校によって外部実習があったりなかったり、まちまちです。技術面で習う内容も学校に一任されているところがあり、それが学校ごとの特色になっているとも言えます。そして鍼灸師は(あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師もそうですが)開業権が法的に認められています。そのためどこかで開業という選択肢が頭に残るもの。どこかに勤めて定年になったとしても最後は自分で始めるということもできるのです。相談者も卒業後に開業を見据えていて、そのために最善と思われる選択肢は何かを模索する過程で教員養成科進学が候補に挙がったのです。
あん摩マッサージ指圧師あるいは柔道整復師など別の医療職種の免許を持っているとまた別なのですが、はり師・きゅう師免許のみ、つまり鍼灸師だとキャリア形成がそう簡単にはいきません。資格を取っても離職して鍼灸をしなくなる人が少なくありません。何年も前から業界の課題になっていると言えます。余談で他意はないのですが、最近いわゆる闇バイト・ルフィ事件といわれる強盗事件の実行犯で逮捕・起訴され、東京地方裁判所が懲役13年・罰金20万円の判決を出した鍼灸師がいます。執行猶予なしです。控訴するかは分かりませんが刑が確定した場合、あはき法と言われる我々の免許を管理する法律によりはり師・きゅう師免許が失効する可能性が高いのです(※罰金刑以上の刑に処された者は厚生労働大臣の判断で免許失効や業務停止を命じることができます)。懲役を終えたあとも鍼灸師としての身分も失う。もとを辿ると経営が失敗し生活に困窮したからだと報道されています。開業権があるということはキャリア形成に技術面だけでなく経営も関わってきます。
今回の催しはこれまでなかったもので私も面白いと感じました。違う立場の人間が意見を交わし情報を得る。化学反応が起きて考えていなかった発想が生まれたり、そういうこともあるのかという新しい知識が得られたりしました。縁があって2年後に相談した方が母校教員養成科に入学して後輩になるかもしれないなと思いました。
甲野 功
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