開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
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住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
日曜日は母校の東京呉竹医療専門学校が行っている2024年度卒後臨床研修講座に参加してきました。これは東京呉竹医療専門学校の卒業生を対象とした研修講座で新型コロナウィルスが流行する前から何度か参加していました。約4年間の休止を経て最近復活しました。東京呉竹医療専門学校は2年後の2026年に創設100周年を迎える伝統がある学校。鍼灸業界では最大手の専門学校になると思います。現在、東京・新横浜・大宮の3校がありますが、本卒後臨床研修講座は東京校の卒業生を対象としていて原則、新横浜と大宮の卒業生は参加できません。それくらい卒業生が多いとも言えます。また講習を担当する講師も業界内で評価されている先生ばかり。本校は教員養成科も持っているので教育面でも豊富な人材と繋がっております。
今回私が参加したのは『臨床に役立つ「スポーツマッサージ」』というテーマ。9月に参加した古屋英治先生が講師を務めた『臨床に役立つアスリートケアと東洋医学』以来です。古屋先生も非常に優秀な先生です。今回の講師は廣橋憲子先生(メディカル和気院長、日本マニュアルセラピーチーフインストラクター)です。競泳日本代表チームトレーナーとして北京オリンピックらに帯同してきた先生。前々からお名前を存じ上げていました。どれくらい前からというと20年前からです。私が東京呉竹医療専門学校(当時の校名は東京医療専門学校)鍼灸マッサージ科に入学したのが20年前の2004年のこと。その当時、マッサージ実技やあん摩マッサージ指圧理論の授業を担当したのが広橋憲子先生の娘の由香先生でした。その頃から実家のこと、母のこと、競泳選手のこと、などを授業中耳にしていたのです。私はあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師でありますが根幹にあるのはあん摩マッサージ指圧師。元々手技療法がしたくてこの世界に入りました。言うならばあん摩マッサージ指圧師になるために東京医療専門学校に入り、ついでに鍼灸師にもなったという感じです。色々な技術を学び修得し練習していますがベースとなるのが按摩、マッサージ、指圧らの器材を用いない自身の手指らで行う技術です。
また別に廣橋憲子先生との接点があります。それは医道の日本社から出している「スウェーデンマッサージ入門」という書籍。この著者が広橋憲子先生です。新型コロナにより患者さんの来院が激減し、また外出もままならない状況に陥っていた頃、これをチャンスを捉えて勉強しようと買った本でした。マッサージの勉強をしようと。世間で言われているマッサージというのは、我々あん摩マッサージ指圧師がいう按摩になります。また(定義がはっきりしませんが)整体というものは指圧の範疇になります。日本の法律で決まっている国家資格においてはきちんと分類されています。按摩は中国で、指圧は日本で生まれたもので技術体系も異なります(※厳密に言うと色々とありますが大枠としてそうです)。あん摩マッサージ指圧師のマッサージとはヨーロッパから導入されたmassageであり皮膚を直接触って行うものです。日本だとエステのイメージが強いと思いますが、日本には明治時代に軍医が導入したという歴史があります。広橋憲子先生はマッサージの本場で勉強してきており、その一つがスウェーデンマッサージでした。コロナ禍のとき一人読んで勉強したスウェーデンマッサージ。当時は知らなかった概念が記されていて、後に知り合いを呼んで練習したものでした。今回、著者の広橋憲子先生に習える機会があるということですぐに応募したのでした。
当日会場には由香先生もいて、約20年ぶりに再会しました。今も非常勤講師を務めているそうですが卒業生の集いなどのイベントで会うことがなく。懐かしかったです。ご家族での参加でした。
初めてお会いした広橋憲子先生は想像以上に小柄でした。“自称”身長150cm。おそらくもっと低いのでしょう。年齢も(本人が公表していたのですが)70代。この体格と年齢でオリンピアンや日本代表選手レベルのアスリートを臨床で向き合っているのです。更に驚いたのが40代で東京呉竹医療専門学校に入学したという事実。しかも最初は柔道整復科。当時の柔道整復科は2年制。その後同じく2年制だったあん摩科へ。この時代はまだ国家試験ではなかった。40代と言えば現在の私も同じ40代。前半と後半で違いますが凄いことです。また柔道整復師の知識と経験があった上でのものだったことを知れました。海外志向が強い広橋憲子先生は世界中を旅していて、世界のマッサージを学んでいました。タイ式マッサージを受けたのはもう50年も前のことだそう。これまでにタイで3校のマッサージ学校に通っています。またヨーロッパでは、患者が着衣で衣服の上から行う按摩・指圧ではなく、皮膚を直接触れるマッサージが主流だということ。そして慰安、美容目的が多いイメージの日本と異なり医療目的のマッサージがヨーロッパはあるといいます。スウェーデンマッサージを学び、イギリスでディープティシューマッサージ(Deep tissue massage:深部組織マッサージ)を学びます。日々新しい技術を習得し、また考案しているのです。
前述した「スウェーデンマッサージ入門」では術者の立ち方(スタンス)としてフェンサーポジションとライダーポジションの基本姿勢があるとしています。フェンシングのように前足を出して前後に動くフェンサー、乗馬しているように正面を向いて膝で体を左右にコントロールするライダー。ヨーロッパらしい考えです。本では理解していなかったのですがスウェーデンマッサージでは術者は踵を床から離さないのだとか。いわゆるベタ足で足底がしっかり床に付いている。社交ダンス経験者の私は踵をあげて体を送り出す技術に慣れているので意外でした。一方、これはタンゴの立ち方だなと頭を切り替えました。
そして今までやってきて(オイル)マッサージにはない概念。往復する。あん摩マッサージ指圧理論の教科書ではマッサージは求心性(末端から中心部に向かって行う)の手技と記載されているのですが、最後に求心性で軽擦を行い流せばいいので途中は方向を気にせず往復して構わないというもの。そして圧を強めにオイル(あるいはクリームなど滑剤)は少なめ。同じく教科書では主にリンパ、静脈にアプローチをするので滑らせて強すぎないようにとありますが、ここでは筋肉へのアプローチなので強めにします。同時にオイルをつけ過ぎると滑って圧が入らないので注意する。「スウェーデンマッサージ入門」にも書いてありましたが実際の手技を見て練習してみると感覚が分かります。
更にディープイシューマッサージ。筋肉だけなく腱、屈筋支帯にもアプローチをする。アンカーストレッチ、ローリング、フリクション(強擦)による触察、クロスファイバーテクニックなどのテクニックを習いました。広橋憲子先生は筑波技術大学で講師を勤めていた経験があり、今年の呉竹医学会学術大会でみた同じく筑波技術大学名誉教授藤井亮輔先生のマッサージに似ていたと思いました。解剖学ベースで細かく軟部組織にアプローチしていくやり方。これまで単発で得てきた点の知識が繋がって線になるような感覚です。飛躍的に理解が深まりました。
日曜日にセミナーを受けて復習しているところです。月曜日、火曜日と臨床をしてきて按摩指圧にも変化が出ている感触があります。考え方がアップデートされました。繰り返し練習して自分のものにしていきます。まだまだ上達できそうだとわくわくしています。
甲野 功
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