開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師、柔道整復師。これらの資格を私は取得しているのですが、共通していることは正式に(法的根拠があるという意味)開業権があること。医療系国家資格で開業権があることを規定した法律があるものは少ないのです。そのため術者はどこかキャリアの選択肢に開業があるものです。医療機関で医師の指示の下、勤務するという道しかなければこのようなことは起きません。そして開業=経営をするということでもあります。独りで立つといかいて独立。独立し開業する。それは自ら経営を担うということに他なりません。
私も開業する前から、そしてあじさい鍼灸マッサージ治療院を開院してからより一層、経営に関することを学んできました。元々理科系大学を出た理系人間。実験・研究を得意とする職人肌。経営というものは苦手ですし、本当はやりたくない。しかし独立開業するにあたって避けては通れないもの。勉強するようになりました。その際に経営戦略だとかマーケティングだといったものを知ります。元々海外で発展した考えであるため横文字が多くてとっつきにくかったです。それを分かりやすく理解できるきっかけが森岡毅氏の著書でした。当時ユニバーサルスタジオジャパンの再建を達成しメディアに注目されていた森岡氏。テレビ番組で知り、著書を読みました。これまで出した本は全て読んでいると思います。
先日発売されてすぐに買って読んだ本があります。
<森岡毅必勝の法則 逆境を突破する異能集団「刀」の実像> 中山玲子 日経BP
森岡氏が書いたものではありませんが、彼とその会社を取材した記者による書籍。森岡氏らの主張を紹介しつつ、客観的に分析をしています。本書で私が注目した個所が多数あるのですが、一つ紹介します。それは
“消費者の行動を左右する要素は様々だが、絞り込むと本質的には3つしか残らない”
というも部分です。その3つとは。第一にプレファレンス(相対的好意度)。第二に認知。第三に配荷or距離です。一つ一つ見ていきましょう。
「プレファレンス」。聞きなれない単語です。「相対的好意度」と和訳されます。森岡氏の著書や言葉ではよく登場します。彼の著書「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」で登場しました。意味合いとしては「選好」や「優先順位」といったものです。森岡氏は、プレファレンスとは”消費者が特定のブランドや商品・サービスに対して抱く相対的な好意度”と定義しています。そしてマーケティングの本質はプレファレンスを高めることにあるとしています。そのため消費者の行動を左右する要素の最優先としてプレファレンスを挙げているわけです。そしてプレファレンスは3つの要素によって構成されると説明します。
・ブランド・エクイティ:ブランドが持つ目に見えない価値
・製品パフォーマンス:製品・サービスの品質や機能
・価格:製品・サービスの価格設定
この3つをバランス良く向上させるとプレファレンスを高めることができます。森岡氏はプレファレンスを定量的に計測し、そのデータをもとにマーケティング施策を立案しています。価格や性能はもちろん、目に見えない価値も重要です。
認知。これは日本語そのままです。どれだけ知ってもらえているかということ。認知がお金を生むということは以前から言われています。製品にしろサービスにしろ消費者は知らないものにはお金を払いません(手を出しません)。認知を上げるために企業はテレビCMやネット広告、繁華街に看板を出すなどの施策をします。飲食店においてどれだけ美味しい料理でもメニューに載っていなければオーダーが入ることはありません。まず存在(名称)、その機能、その効果といったものが人に知られないといけません。世の中には炎上商法というものがあります。嫌われようが知られた方がマシという考えです。
配荷or距離。これは扱う製品やサービスによって異なります。森岡氏はかつてP&Gにいてシャンプーなどの消費財を扱っていました。この場合だと製品の手に取りやすさを示す要素が配荷になります。ユニバーサルスタジオジャパンのようなテーマパークであればそこまでの距離となります。これは単純なものではなく心理面や時間も加味しています。例えば近所のコンビニエンスストアに売っていないから配荷が悪いと言えるのか。ネット通販を頻繁にする人にとってはそこで購入できるなら問題ないでしょう。また場所に対する距離についても物理的に遠いか近いかでは測れません。飛行機で行けるなら近いと感じる人もいるだろう、と本書で述べられています。私の耳にした話ですと北海道の人は道内を移動するよりも飛行機で羽田に向かった方が便が良く、近いと感じることがあるといいます。ですから北海道や東北など物理的に近いところに車やフェリーを使って移動するよりも飛行機に乗れば着いてしまう東京の方が(飛行機の便も多いということもあり)心理的に近いと感じるのだそう。
森岡氏率いる株式会社刀はこれら3要素を精緻に数値化し、高い精度で確率をはじき出すノウハウがあります。一般的には品質、技術力に優先順位を高くしがちですが、それは決して高くない。①プレファレンス(相対的好意度)、②認知、③配荷or距離のどれかが足りないと埋もれてしまい消費者を動かせないというのです。
ここまでは単に知識の紹介です。これを自分の仕事に当てはめて考えてみます。
まず最も重要視するプレファレンス(相対的好意度)です。これはまだ私は明確に理解できていません。プレファレンスを構成するのがブランド・エクイティ、製品パフォーマンス、価格だといいます。製品パフォーマンスと価格は分かりやすいのですがブランド・エクイティというのがピンときません。ブランドが持つ目に見えない価値と説明されますが。そこでプレファレンスの日本語解説といえる相対的好意度で考えてみましょう。好意を持たれているか。それも相対的なので他と比較したら好かれているという。この場合、甲野功個人と鍼灸マッサージという技術の2つあると思えます。というのは鍼灸自体は好きな人は猛烈に好きですが、多くの人は避ける傾向があります。それは全体鍼灸受療率からも分かります。例えば新宿で道行く人にインタビューをして鍼灸を受けるのが好きですか?とアンケートを取ったとして好きですという人の割合は高くないでしょう。そもそも受けたことがない、痛そう、熱そうといった回答が多いと思われます。一方マッサージは大概の人は好きですし、嫌悪感を持つ人は少ないでしょう。何をもってマッサージというのかは別として、世間一般で想像するマッサージとすれば。対して術者である私個人の相対的好意度はどうでしょうか。特に鍼灸は術者そのものがみられるもの。誰がする鍼灸なのかが重要です。反対にいわゆるマッサージだと誰がしてもあまり変わらないという感じがします。そう考えると相対的好意度を測るというのはなかなか難しいです。
次に認知です。これも鍼灸マッサージという技術と甲野功個人という術者で分けて考えてみます。鍼灸もマッサージもそのものはよく知られています。正しく理解されているかは術者側として考えると疑問がありますが。一方、私個人の認知は低いでしょう。世にいうインフルエンサー、芸能人、著名人などに比べれば一庶民です。ただ鍼灸マッサージを受けたいと考える人に対しての認知はまた別です。直接の知り合いはもちろん、SNSやホームページで広く存在を知ってもらう工夫はしています。検索をしたら辿りつくように。そうなると広報や広告がどれだけできているかがポイントになりそうです。また単に知られているのではなく、好意的に知られていないと意味がないでしょう。店主は嫌いだけど味は抜群にいいから食べに行くレストランは存在するでしょうが、鍼灸マッサージは直接相手に触れるものですしそのようなことはほぼ考えられません。認知に加えて最初のプレファレンス(相対的好意度)が重要になると思われます。というよりプレファレンスを伴って認知されないといけない。
そして距離です。私の業態では配荷は考えず距離になるでしょう。たまに新幹線で来るような場合もありますが、大部分は生活圏に住む方が患者さんです。当院まで行ける距離が大事。その場合も心理的距離や時間が関係していて比較的遠方に住んでいても当院の近所に出向く必要がある人にはついでに立ち寄れるので心理的距離は短いでしょう。また新宿区は人口が密集しているので競合も多数あります。物理的に近いところに住んでいる人でも生活導線になければ他にいくらでも鍼灸マッサージを提供するところはありますから遠くなるでしょう。反対にプレファレンスが高く認知されていれば(私のことを知っていて相対的に好意を向けていてくれれば)距離は克服できるはずです。地方から新幹線で上京し来院する方もいるわけなので(この場合、他にも上京する理由があります)。
大事なことはこの3要素を精密に計測すること。それにより森岡氏は予測を立てているのです。私に置き換えるとどう要素を数値化して計測できるのかということが課題になります。現在のところそれは難しいと考えています。しかし項目を知って内容を理解しておくことで経営のヒントになることは間違いないでしょう。知識を学び、実務の中で試行錯誤していきます。
甲野 功
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