開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
個人事業主になって約13年。社会的な身分はあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師などになりますが、経営者としての一面を持ちます。もっと言えば商人。商売をする人です。技術があればいい、というのは従業員の立場だけのもの。素晴らしい技術があってもそれが“売れ”なければいけません。給料をもらう立場であれば与えられた業務を遂行すればいいのです。独立開業したら業務を生み出さないといけません。そのことが大きな苦労になります。あじさい鍼灸マッサージ治療院は昨年で開院10周年を迎えました。開院当初から今も変わらず経営、商売のことはずっと課題です。プロである以上技術を磨く、知識を増やすというのは当たり前のこと。それに加えてどう商売にしていくかを模索して考え続けます。
これまでに様々な媒体から商売のヒントを得てきました。今後また紹介すると思いますが森岡毅氏の考え方は書籍やテレビ番組を通じて大きな影響を受けてきました。本でいうと宝島社の「見るだけノート」シリーズ。他にも挙げだすときりがないのですが、重要なコンテンツとして三田紀房氏の作品たちがあります。三田紀房氏とは漫画家で代表作は『ドラゴン桜』。二度の実写ドラマ化がされました。他にも実写映画化された『アルキメデスの大戦』も知られていることでしょう。私は三田紀房氏の作品を多数愛読しており、現在進行形だと『Dr.Eggs』、そして経済全般として『インベスターZ』を読んできました。この2作品は過去に紹介しています。そしてもう一つ勉強になったのが『エンゼルバンク』です。こちらは副題として“ドラゴン桜外伝”とあり、『ドラゴン桜』のスピンオフ作品となっています。『ドラゴン桜』は経営難の高校を立て直すために東大合格者を出すという受験を題材にしたマンガ。舞台は高校です。その高校で教師だった女性が転職し、転職支援の仕事をする話です。主人公の女性はクライアントの転職サポートを通じて社会のこと、経済の実態、経営者の心得などを学んで成長していくのです。あじさい鍼灸マッサージ治療院を開業する前から直後の時期に『エンゼルバンク』を読んで学んでいました。
最近、この『エンゼルバンク』のエピソードで大事なことを思い出させることになります。9巻に掲載されたエピソードです。
<エンゼルバンク9:ドラゴン桜外伝(モーニングKC) 三田紀房 講談社>
なおこの部分は「ドラゴン桜2(公式)」のXアカウント@mita_norifusaで紹介されています。
https://x.com/mita_norifusa/status/1181769623047303169
ここで提言されていることが、「お客様は神様です」、「ありがとうございます」を忘れずに感謝の気持ちで接しなさいという教育法は間違っている、というもの。正しいのは、逆にお客から「ありがとうございます」とお礼を言われるぐらいお客のために尽くせ、である。お客に感謝を述べるのはお客のためにといいながらサービスが十分でないのを言葉で誤魔化そうとしているにすぎないのだと。お客が求めているのは払う料金への感謝ではないのである。料金に見合ったサービスを受け取ることできれば、またお越しくださいと言われなくても自発的に来るもの。お客からお礼を言われないのはサービスが不十分な証拠。得した気分になったお客が、自発的にお礼を言いに来るようなサービスをして初めて本物のサービスといえるのだと。
この話は10年以上前に読んでいるので知っていたはずですが、最近まで頭から消えていました。思い出して非常に大切で重要な意見だと痛感しています。それは初めて読んだ当時は実感がわいていなかったからです。それは理想論だろう。言われてみればそうだろうけれど。私の仕事は技術職であるからまず(マッサージや鍼灸らの)技術が無くても話にならないし。このように考えていたのだと思います。その後新しい知識や理論を学び、今だと受け取り方が変わっています。
顧客満足度は実績-期待である。そのような考え方があります。事前の期待はマイナスに働きます。期待通りの結果(実績)を出しても満足度の点数は0点。予想通りで何の感動もない、というやつです。それくらい当たり前だろうと。反対に事前に期待させ過ぎれば一般的に及第点のクオリティであっても満足度はマイナスになります。もっと期待していたのに、ということ。ですから期待値を上げ過ぎることは悪手で私の業界でいうと、絶対に治ります、病院に行っても治らなかった症状が一回で改善、世界一の技術力です、といった誇大な謳い文句の広告はダメです。期待が高すぎてどんな結果でも満足せず(ぎりぎり納得できるくらいが限界でしょう)、残るのは患者さんの不満だけ。そもそも挙げた表現は広告ガイドラインに抵触するアウトな表現ですし。一方、事前の期待を超えた効果(実績)を出せば満足度はプラスとなります。それがすなわち、お客からありがとうと言われるサービスになる。
また私の仕事も大きな範疇で言えば対人サービスでありますから、技術力があることがサービス力に直結するのです。この値段でこれだけのことをしてくれたという気持ちを持ってもらうにはマッサージ、鍼灸らの施術に関する技術がサービスの要素になるのです。技術を磨き知識を増やすことがサービス向上になるのです。今より若いときはそれが分かっていませんでした。
思い返すとこの仕事は患者さんからありがとうと感謝されることが非常に多いです。よくよく考えるとこちらは仕事であり、患者さんは対価となる料金を支払っているのです。こちらが利用してくれてありがとうございますと感謝するのが筋で利用者がありがとうというのは変な話であるはずです。私はこの仕事に就く前は半導体商社で勤務していました。取引相手にありがとうと言われた記憶はほぼありません。無理行って悪かったね、という無茶を押し付けたという自覚がありその謝罪はよくありましたが。それはお客だけでなく社内の他部署の人間も。やらせて、押し付けて「ごめんね」はあっても、やってくれて「ありがとう」はほぼ無かったと思います。それ以外にもアルバイトで工事現場の交通誘導でも工事関係者から「ありがとう」を言われた記憶はないです。頑張っているね、という労いくらい。それらに比べると圧倒的に今の方が「ありがとう」と言われます。
それだけのサービスをしているのか。もちろん毎回最善、全力を尽くします。それが質の向上となっているのか。会社員の時もアルバイトの時も手を抜いていた自覚はありません。その都度全力で取り組んでいたはずです。そうなると、エンゼルバンクの話で言えば、それは大したことのないサービスに過ぎなかったとなるのです。今は患者さんから「ありがとう」を言ってもらえるレベルのサービス内容になっているということでしょうか。
改めてお客からありがとうを言われる仕事に就いたのだと実感します。そしてより一層、料金を支払う患者さんから感謝される仕事をしないといけないと自分を戒めます。治療技術、医学的知識を内包したサービス。料金以上のことを提供する。それが商売において大切です。
甲野 功
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