開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
あじさい鍼灸マッサージ治療院は今年5月に開院して11年になります。これまで個人院として一人でやってきました。これからもこの場所でやる限りスタッフを雇うことなく一人のままだと思います。そもそも誰かを雇うということが性に合わないと思っています。鍼灸学生は協調性がないという研究結果が母校の教員養成科卒業研究でありました。組織で動くのが苦手な人間がこの業界に入ってくるのだと思われます。肌感覚でそれは正しいかなと。私も大学卒業後に一般企業に就職するも2年半で退職。心身を壊したという理由がありますが、その根本的な原因は対人関係のストレス。国家資格を取得して新卒で就職した鍼灸整骨院は約4年で退職しました。これは役職が上がりマネージャー業務がどんどん増えていったことに対する反発が大きかったです。この頃後輩をまとめる立場(役職)であり、患者さんと向き合う臨床が疎かになっていくことへの不満や、お山の大将となる不安がありました。これなら一人で仕事をした方がいいという結論を生み出します。その結論を出す裏には、組織を、チームをまとめて動かすことがどれだけ難しいかを体験したことがあります。個人的な感想としては優秀な臨床家になる方が人をマネジメントすることより簡単だと思っています。名プレイヤーが名監督になるとは限らない。これはスポーツでよく言われること。サイゼリヤの元社長も現場で活きる人材を管理職に格上げすることが失敗に繋がると著書で述べています。
一方、個人事業主・一匹狼でいるからこそチームを組んだときに強さを発揮するということも体感しています。開業した者同士が集まって何かの企画をする。その際は圧倒的に個人でやっている者がメンバーにいると強いです。それは一人で何でもやる経験があるため、最初から最後まで一通りのことが分かっているから。言わなくてもやることが分かります。また独立しているので前に出るときは躊躇なく前に出る胆力が備わっています。周りの目を気にして物怖じすることはあまりないです。もちろん引くところもわきまえています。そのさじ加減ができないと個人院は生き残っていけません。同僚がカバーしてくれませんので。これまで幾度となく鍼灸マッサージ業界でプロジェクトに参加しました。主催者になることはほぼないのですが、協力することは多いです。スタッフをする、参加者となる、サポートをする、など立場はそれぞれですがチームの一員になる。恒常的、持続的にチームがあることは稀ですがチーム(あるいは組織)のメンバーを担う。そこには個々の強みを活かしたチーム作りが自然と求められます。
個々の強みをチーム組成。どうしたらそれが実現するのか。マーケティング集団「刀」の森岡毅氏は実践から導き出した理論があります。
<森岡毅必勝の法則 逆境を突破する異能集団「刀」の実像> 中山玲子 日経BP
この本からそれを見ていきましょう。本書は森岡毅氏が書いたものではありませんが森岡毅氏の考えや行動が紹介されています。本書よりも前に森岡氏が書かれた本でも登場したテレビ番組でも紹介された、人間の能力・資質を3つに分類するものがあります。
・T(=Thinking)型:思考力に強みを持つ人
・C(=Communication)型:人とつながる力や伝える力が強い人
・L(=Leadership)型:人を率いて動かす力を強みとする人
このようにT、C、Lの3つの型に分類しています。血液型のようにどれか一つだけに該当するのではなく、この要素が特に強い、バランスよくどれもある、といったようにグラデーションがあります。人をタイプ別に区分するのが目的ではなく、あくまで人の強みを活かすためにどの分野が強みなのかを意識させるためのものです。形式知化のためにあると。形式知とは今年亡くなった故野中郁次郎氏が提唱した概念で客観性があり誰が見ても同じ判断ができる知識やノウハウといった意味合いです。対比として暗黙知があり、こちらは経験や勘といった言葉や数字で表せないものです。鍼灸師はどうしても説明しにくい個人の能力、すなわち暗黙知、が占める割合が高くなります。どのように形式知化するかは課題です。鍼灸業界も個々の強みをT、C、Lの3分類で考えることは有効だと思います。
ここまでは個人の強みの話。そからチームや組織としてどのように強みを出すのかという段階に進みます。森岡毅氏は会社や事業推進のためには“4つの不可欠な力”があると考えています。
①市場構造を読み解く力
②プロダクトを創る力
③プロダクトの価値を伝える力
④①~③を回し会社もしくは事業全体で推進していく力
以上の4つです。森岡毅氏はこの4つの力をチームに備えることを重視します。
①市場構造を読み解く力とは、真の競合はどこか、勝算はあるかといった問いを求めるような力です。本質と外れた方向を向いて、余計な議論を重ね、無意味な注力をしてしまってはいけません。鍼灸業界において、本当の課題はそれなのか?真の競合(敵)はそれですか?ということを感じることがままあります。
②でいうプロダクトとは製品やサービスを意味するものです。我々の業界でいうと臨床上でのサービス(施術)が主でしょう。これまでの歴史において、時代環境の変化や文明の進化に伴い幾多の技法を生み出してきてしました。②は強いと思います。
③は施術の価値を患者さんや利用者に認知させる力。SNSの活用が進み、鍼灸業界は強くなっていると思います。むしろ問題が出てきていて、暴走を抑えるために行政が動いている(広告ガイドライン施行や景品表示法違反での行政指導など)とも考えられます。
④がこの業界として特に弱点なのかと感じています。総合力であり、①~③の全てを使って推進しないといけません。
チームにしろ組織にしろ、4つの強みを全て持つこと。そのためにT、C、Lらの強み持つ人材をチームにどのように配置すればいいのか。それを考えていきます。反対にチームにとって4つの力をつけるためにどのような人材を集めるのか。自然と人が集まってチームとなるのか、誰かが人を集めてチームを作るのか。どちらの場合でも頭に入れておきたいです。個人院が多いですが企業として組織となっている鍼灸院もたくさんあります。そのようなところにはストレートに役立つ考えだと思います。また個人が集まって単発のイベントを行う際にも役立つものだと考えられます。
甲野 功
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