開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
先月、宮崎県宮崎市の整骨院で柔道整復師免許を持たない無資格の従業員が施術をしたにもかかわらず、嘘の証明書を作成し、共済金をだましとったとして、柔道整復師の男が逮捕されたという事件がありました。どのようなものかというと、逮捕された柔道整復師が経営する整骨院において、交通事故により怪我をした患者に対して(柔道整復師免許を持たない)無資格従業員に施術をさせたにも関わらず、柔道整復師である容疑者が施術を行ったという嘘の内容証明書等を作成し、自動車保険取扱い共済事業者から共済金7万円を騙し取ったという容疑です。
事情を説明すると、柔道整復師は国家資格であり接骨院・整骨院という施術所を開設することができます。そして急性外傷の応急処置などに保険(療養費)を請求することができます。脱臼、骨折は医師の同意のもと、捻挫、打撲、挫傷は医師の同意がなくても保険請求をすることができます。受領委任払いといって、自己負担分以外の保険でまかなう施術費用を患者さんの代わりに保険者(保険組合や地方自治体など)に柔道整復師が請求することができます。交通事故の治療では自賠責保険や共済保険が適応されることがあり、その際に柔道整復師が施術を行うと、後に柔道整復師がその費用を請求できることがあります。もちろんその施術は柔道整復師免許を持つ者が行わないといけないのですが、この事件では非柔道整復師に施術をさせたにも関わらず柔道整復師が施術したと虚偽の書類を作成して共済金を請求したというもの。詐欺罪容疑での逮捕でした。
この報道を知ったときに私は詐欺罪よりも柔道整復師法違反だろうと思いました。柔道整復師の業務において根幹を揺るがすことなので。例えば医師免許を持たない非医師(いわば素人)が手術を行って対価を得たとします。医師のふりをしてお金を騙し取ったということよりも素人が手術をした方が問題だと思いませんか。騙すのも当然悪いことですが、素人が手術をしてしまう方が遥かに社会的悪影響でしょう。手術が失敗して相手が死亡してしまったら。お金よりも命あるいは健康の方が重要です。このように非柔道整復師に交通事故に遭った患者さんの施術をさせたということの方が問題で、それを罰するのは柔道整復師法という法律です。詐欺罪よりも柔道整復師法違反だろうという気持ち。
それが今月に入って続報がありました。
讀賣新聞オンライン
整骨院で無資格の従業員に26回施術させ、療養費3万円を宮崎市からだまし取った疑い…柔道整復師を逮捕
2025/03/07 12:03
記事には以下の様にあります。
『
宮崎県警は6日、福岡市中央区、柔道整復師の容疑者(41)を柔道整復師法違反と詐欺の疑いで再逮捕した。
発表によると、容疑者は昨年9月、自身が営む宮崎市内の整骨院で、柔道整復師の資格がない従業員に患者5人への柔道整復施術を計26回させたほか、無資格の従業員が施術したのに有資格の自身が施術したなどと偽り、今年1月下旬頃、国民健康保険負担分の療養費計約3万円を宮崎市から振り込ませてだまし取った疑い。同法違反について容疑を認める一方、詐欺容疑は否認しているという。
容疑者は無資格の従業員が施術したのに自身が施術したと偽り、自動車共済金をだまし取ったとして2月、詐欺容疑で逮捕されていた。
』
最後の部分は最初に紹介した事件について書かれています。その容疑者が3月6日に再逮捕されたというのです。容疑としては詐欺と共に柔道整復師法違反です。具体的には『柔道整復師の資格がない従業員に患者5人への柔道整復施術を計26回させたほか、無資格の従業員が施術したのに有資格の自身が施術したなどと偽り、今年1月下旬頃、国民健康保険負担分の療養費計約3万円を宮崎市から振り込ませてだまし取った疑い』です。恐らく逮捕された柔道整復師は院長であり、スタッフ(非柔道整復師)に指示して患者さん5名へ合計26回施術をさせた。そして宮崎市に対して国民健康保険負担分(患者さん自己負担分を除いた料金ということ)の療養費約3万円を不正請求し受給された。このような状況だと思われます。私も柔道整復師でありますし整骨院での勤務経験があるので予想と大きな差はないと考えています。
今回注目しているのは、冒頭に注目した柔道整復師ではない無資格従業員に患者さんを施術させたという柔道整復師法違反容疑での逮捕です。この場合、柔道整復師しか逮捕されていないようなので従業員の無免許施術ではなく、管理する立場でありながら無資格施術をさせたことに対する柔道整復師法違反ということでしょう。私が知る限り、過去に千葉県でも逮捕例があり、その時は院長の柔道整復師ともう一人の柔道整復師、それに加えて施術をした非柔道整復師も逮捕されています。今回の宮崎市の件では従業員は逮捕されていないようです(報道内容をみる限り)。
無資格従業員に柔道整復施術をさせた疑いでの逮捕というのは重要です。何故ならば10年前ならよく聞かれたことだからです。鍼灸師は持っているが柔道整復師ではない従業員が勤務して柔道整復施術をするというケースもよく聞きました。違法行為であるのですが当時は見過ごされていました。時代を経て逮捕するという状況になったわけです。
もう一つの容疑が詐欺。正当な施術でなない(※柔道整復師が行った施術ではない)にもかかわらず療養費を請求して約3万円を騙し取ったという容疑。これが詐欺容疑で逮捕される(実際には再逮捕ですが)というのは私は今まで聞いたことがありませんでした。詐欺。確かにそうなのですが。柔道整復師法違反容疑ではないというのが。前回の交通事故の共済金を騙し取った疑いと同じことなのですが詐欺罪の疑いでの逮捕。これまで知らなかったケースです。また約3万円という金額。金額の多寡ではありませんが、非常に少額だと感じています。なぜなら過去には個人で億単位の不正請求が発覚したことがあります。数千万、数百万単位の不正請求で逮捕されるイメージがかつてありました。このようなことを書くのは問題かもしれませんが3万円でも捜査して逮捕に至るのだと感じています。更に国民健康保険という点も。組合や協会けんぽのように企業が保険者の場合は詳しくチェックをするのですが、地方自治体が保険者である国民健康保険は件数が膨大なのでチェックされにくいという話がかつてありました。これも語弊がありますが捜査の本気度を感じていまいます。
以前の報道をみると自動車事故の損害保険会社から通報があり捜査を進めていたようです。そして共済金を騙し取った詐欺容疑で逮捕し、更に捜査を進めて証拠が確認されて再逮捕に繋がった。いずれにしても業界にとって重要なケースになると思っています。無資格の従業員というのがどのような立場なのか。場合によっては施術をした従業員も柔道整復師法違反疑いで逮捕される可能性があるわけです(実際に過去に千葉県では逮捕例があります)。鍼灸師や学生も注意しないといけません。当然、現場責任者である柔道整復師も。そう考えさせる報道でした。
甲野 功
コメントをお書きください