開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
昨日は朝から鍼灸専門学校の鍼灸科2年生が二人来院しました。学生ペア割という当院のシステムを利用しました。これは鍼灸マッサージ学生あるいは進学を考えているプレ学生を対象に見学と体験をいっぺんに行うというもの。学生さんは学校の授業ではなく現実の臨床現場を見学したいという要望があります。学校では臨床実習や見学実習がありますが人数や時間の制約があります。また希望する技術やジャンルを見ることややることができるとは限りません。そこで実際に開業している術者の施術を見たいという要望が出てきます。一方、現場としては見学お断りという先生も少なくないですし、患者さんの方が見ず知らずの学生に見られるのは嫌だという方もいるわけです。その点を大学病院や学校附属施術所だとクリアーできるわけですが。それならば見学する人が患者役を連れてくればいいのではないかということで、二人ペアになって来院してもらい、交互に施術を受けて片方はそれを見学すればいいだろう。そのような取組みです。学生ペア割はもう5年前、コロナ禍に入る直前に現役の鍼灸マッサージ学生さんからの発案で始まりました。価格も当時の学生さんの意見を考慮しています。
今回はXで私のことを知って連絡がありました。他の鍼灸院を予約して、その後鍼灸学生だと明かすと非難された経験があったというのです。そのためうちのように学生を受け入れてくれる所があることに驚いたそうです。クラスメイトを誘って春休みに入ったタイミングで来院したのでした。
学生ペア割はその場で臨機応変に内容が変わります。学生さんがそれぞれ何を求めるかによるのです。今回は事前に質問事項、見たい技術、知りたいことがあれば教えてくださいと学生さんに連絡していました。するとかなり細かく質問事項や知りたいことが返信されました。技術面もそうですが、鍼灸業界のことを知りたいという要望を強く感じました。技術に関してはきちんと専門学校の授業で基礎を学んだ方がいいわけです。基礎というのはまず安全に鍼灸をすること。その上で実践的なものを学ぶ。体験して見学する。それを糧に学校の授業を経て卒業後の参考にする。それが妥当です。しかし業界のことはなかなか学校では話せません。単純に指導要領にあることを伝えるので時間が一杯です。私も教員免許を持っているのである程度分かりますが、やらなければならないことは目白押しです。平成30年のカリキュラム改正で学ぶことが増えました。そして国家試験は年々難しくなっているので本格的な国家試験対策が早まってきています。また専任教員だと業界の動きをキャッチするのが遅くなりがちです。開業していればダイレクトに影響するので、例えば2月に正式決定した広告ガイドラインなど、すぐに調べておかないといけません。専任教員は専任教員で学校関連の業務が授業以外に多数あるわけで、チェックしている余裕がないでしょう。
業界の状況についてきちんと説明しないといけないと感じ、過去に作成してあった資料を一部改編して作成しました。スライドを用いてきちんと解説した方がいいと思い。一つは美容鍼のこと、でもう一つは業界のこと。ある意味で私の得意分野です。それに付随して業界の歴史も話しました。戦後、日本国憲法が作られたタイミングで現在の法律が作られました。そこから法律の変遷、起きた事件、裁判と判決など。なぜ現在はこのような状態になっているのかをざっと説明します。学生さんは知らなかったことが多くて驚いていました。座学のような時間が数十分かかってしまいました。それも学生さんが何を求めて学校に入学し、今後どうしたいのかを話してくれたのでそれに合わせた説明を加えて行ったことで時間がかかったのです。学生さんの方も受け身で私の話を聞いているだけでなく、質問と意見を述べてくれたのも要因となりました。
施術体験と見学になると。見学したい内容をペアの相手が受けます。人によっては体験を優先することもあります。これもその時々です。授業では学生数が多く、時間もないので曖昧だったところ、苦手だったところを聞きたいという要望がありました。答えは解剖学を勉強してください、というシンプルなものになるのですが、もう一つ私が指摘したのは人の体を触る、観察する時間を作りましょうということ。あん摩マッサージ指圧師も同時に目指す鍼灸マッサージ科(通称、本科)では徒手手技の授業があり、嫌でも人の体を手指で触れてその変化を感じ取ります。良い方に変化させる技術を学びます。鍼灸科(通称、専科)ではそれがなく、鍼灸技術は学びますが人の体を触るという機会が本科より少ないのです。学生さんと話をしていて感じたのは人の体を触っていないなという感想。骨の位置が分からないというが、それはしっかりと触れて体表の奥にある骨を触知していないだけ。見た目で分かる個所もありますが触ってみないと分からないところもあります。しっかりと圧を入れて表皮、脂肪、筋肉らの下にある骨の固さを感じ取る。それができないのはおっかなびっくりと触っている。どれくらい強く押せば痛がる、不快になるという情報や経験がないからだと思いました。そのようなことを踏まえて刺鍼を見せました。
もう一人は美容鍼について。私は美容鍼を売り出してはいないのですが、学生ペア割では見たいという声が多いです。それだけ学生が注目しているジャンルであり、知りたいことなのでしょう。実は学生時代から数えて20年近く美容鍼は習ってやってきているので説明をしながら少ない本数の鍼を見せました。開業してから圧倒的に学生ペア割でみせる方が多い美容鍼を。逆説的にこうことがあるから私の美容鍼技術が落ちないのかもしれません。
施術の最中も質疑応答を繰り返して予定時間をオーバーします。更にその後も相談に。大事だなと思ったことは学生さんの方から私の経緯を聞いてきたこと。これは重要な視点だと私は思っていて、現時点の開業10年経過した私をみるだけでなく、どのようにここまで至ったのかを知ろうとする。誰だって最初は素人で、学校に入って勉強し、国家試験を合格して、何かしらの経験を積んでいるのです。現時点を完成形と仮定するならば、完成形になるまでの過程を知ろうとする、そのことを参考にする。この姿勢が素晴らしいと思いました。この瞬間だけを見てもあまり参考にならなくて、何をしてきて何をしなくて今があるのかも踏まえて考える。個人的に非常に好印象で将来が楽しみだと思いました。
卒業しても安泰とは言えない職業であるのは確かです。免許を取った後も勉強は続きます。学外でも学ぶ姿勢が頼もしく、そのような学生さんに頼られる、恥じない人間でいようと思いました。
甲野 功
コメントをお書きください